マット安川 オピニオン誌「月刊日本」の主幹・南丘喜八郎さんをゲスト迎え、日米中をめぐる現状を歴史も交えてお話しいただきました。

安倍政権は国民ではなく大企業を守ろうとしている

「マット安川のずばり勝負」ゲスト:南丘喜八郎/前田せいめい撮影南丘 喜八郎(みなみおか・きはちろう)氏
月刊日本 主幹(撮影:前田せいめい、以下同)

南丘 「安倍景気」を歓迎する向きも多いようですが、昨今は株価が乱高下しています。結局、儲けているのは海外のヘッジファンドのようなプロばかりで、たぶん国内の一般投資家は損をしている。私にはアベノミクスが成功しているとは思えません。

 先日、新聞の1面に「10年後に所得150万円増」といった見出しが躍りました。

 一般の人が読んだら、年収が150万円増えるんだと思うことでしょう。でもまったく違うんです。政府が打ち出したGNI(グロス・ナショナル・インカム)=国民総所得という概念は、企業が国内だけでなく国外で稼いだお金も加えたものです。

 つまり、企業の所得が増えれば、個人の給料はそのままでもGNIは増える。仮に国民1人頭で割って150万円増えたとしても、儲かるのは企業ばかりで個人の所得は増えない・・・そんな結果になると思います。

 安倍(晋三総理)さんの成長戦略は、国民よりも超大手企業のことばかりを考えているように見えます。それによって下請け、孫請けにもお金が回ってくると期待しているんでしょうけど、大手企業の多くは部分的にしろ本社機能を海外に置いている多国籍企業なんです。

 彼らのためのいろいろな政策が、国民の税金を使って打ち出される。結果として業績がよくなっても、その分の税収はよその国に行っちゃうんですよ。

世界を決めるのは米中2大国。アメリカ追従主義では道を誤る

 6月7日と8日、アメリカで習近平中国主席とオバマ米大統領の会談が行われました。単純に言うと日本にとってアメリカは味方、中国は敵のはずですよね。その2国が2日間にわたって親密に対話する。従来の政権以上にアメリカ追従に傾いている安倍政権は、これをどう見ているのでしょう。

 私が思うに、これは第2次世界大戦の戦勝国同士の会談です。戦後の秩序を動かさないという前提を彼らは共有し、一方にそれを変えていきたい日本のような国もある。両者のぶつかり合いが今起こっているんですね。

 彼らがここに来て2日間も会談することの根底には、戦勝国として作ってきた戦後世界を再確認しようという考えがあると思います。