マット安川 憲法記念日――評論家の西村幸祐さんをお迎えして、憲法改正論議のポイントや日米安保について幅広くお聞きしました。また、最近安倍晋三首相に会った際の報告や、靖国神社に祀られる英霊をめぐる誤認識についてもお聞きしました。

憲法改正はまず9条2項の削除から

「マット安川のずばり勝負」ゲスト:西村幸祐/前田せいめい撮影西村 幸祐(にしむら・こうゆう)氏
ジャーナリスト、作家。音楽雑誌編集などを経て、主にスポーツをテーマに作家、ジャーナリストとしての活動を開始。2002年の日韓ワールドカップ取材以降は拉致問題や歴史問題などに関する執筆活動を行い、2011年4月『JAPANISM』を創刊。『幻の黄金時代 オンリーイエスタデイ'80s』(祥伝社刊)など著書多数。(撮影:前田せいめい、以下同)

西村 現在いろいろな憲法改正草案が出ています。自民党もそうですが、読売新聞は何年も前に出していますし、産経新聞も今年出しました。鳩山由紀夫(元首相)さんも自分でお書きになっている。

 こうした動きは時代の前進だと思いますし、いいことですが、ただそれぞれに違いも大きくてまとめるのは大変です。

 そこで私は、まず喫緊の課題として9条の2項の削除だけをやればいいと考えています。なぜなら、9条2項は簡単に言うと、交戦権の否定だからです。交戦権を否定されるというのは、奴隷でいろというのと同じです。ですからまずはそれだけを削除すればいい。

 日本国憲法は占領憲法であり、私は平和憲法というウソの言葉は嫌いです。しかし、とりあえず基本理念である平和主義というのは残しておいても、9条2項だけ削除すれば、自衛隊法の改正も非常にスムーズにいき、いろんな問題も解決すると思います。

日本も核武装? 安倍首相がオバマ大統領に送った重要なシグナル

 先日、安倍(晋三)総理とお会いしていろんな話をしたんですが、1つ気になることがありました。それは日中の軍事バランスが保てるのはあと2年だとおっしゃっていたことです。

 中国の軍事費の増大と自衛隊の今の予算、装備などを比べると、あと2年で逆転すると。中国の軍事力が日本を上回るということです。

 実は最近、自民党の幹部、例えば高村(正彦)副総裁や石破(茂)幹事長が記者会見や講演会など公の場で、9条について言及しています。これは今のままでは日中の軍事バランスが壊れて非常に危機的な状況になるということが、自民党の最高幹部の間で共有されたからではないかと思います。

 この問題にも関系しますが、2月に安倍総理が訪米した時に、非常に重要な発言をしています。オバマ大統領との会談後に講演を行い、その後の記者団との質疑応答で、アメリカのメディアにこう答えています。

 尖閣問題に関して、我われはアメリカに何も望んでいないし、助けてくれとも頼んでいないと。我われは自分たちで守る、とはっきりと言ったんです。これはつまり、アメリカに対して非常に重要なシグナルを送ったことを意味します。