昼休み、「さっきの定食ちょっとボリュームありすぎたな」などと思いながら、コンビニエンスストアに入る。飲み物の棚に並んでいるのはソフトドリンクの数々。そこで目に飛び込んでくるのは、健康そうにバンザイをしている人のシルエットが刻まれた「特定保健用食品」略して「トクホ」のマークだ。迷わずにトクホのマークがついている食品に手を伸ばす人も多いことだろう。
実際、トクホは飲料を中心によく売れている。2012年4月の発売から1年が経つ「メッツコーラ」(キリンビバレッジ)は2013年3月中旬、累計販売本数で1億7000万本を突破した(480ミリリットル換算、同社発表)。一方、2012年11月に発売された「ペプシスペシャル」も、発売からわずか2週間たらずで130万ケースの出荷を記録(同社発表)。この4月には、トクホの「ヘルシアコーヒー」(花王)が発売され、“トクホ熱”はまた高まりそうだ。
マークが目に飛び込めば無条件に手を伸ばしてしまいそうになるトクホの数々。「脂肪を消費しやすくする」などと効果が書かれてはいるが、その効果がどのような仕組みでどのくらい表れるのか、といったことまではあまり知られていない。
そこで、国立栄養・健康研究所情報センター長の梅垣敬三氏に、トクホの謎を投げかけてみることにした。同センターは「『健康食品』の安全性・有効性情報」というサイトで、企業から収集したトクホの製品情報273件(2013年4月現在)を含む、健康食品の安全性や有効性を総合的に伝えている。
前篇では、トクホとはどのようなものであるのか、誰がどうやってその食品をトクホであると決めているのか、サプリや薬とはどう違うのかといったことを明確にして、トクホの正体に迫っていきたい。
後篇では、私たちがコンビニエンスストアなどでよく目にする「メッツコーラ」や「ペプシスペシャル」、そして新たに注目を浴びている「ヘルシアコーヒー」などの具体的なトクホに焦点を当てて、その効果のほどや接し方などを梅垣さんに聞くことにしたい。
対象は成分でなく食品そのもの
──特定保健用食品(以下、トクホ)が、誕生した背景はどのようなものでしょうか?