米国の奴隷制度をこれまでにない視点で描いたクエンティン・タランティーノ監督の最新作『ジャンゴ 繋がれざる者』(2012)が先週末から日本でも劇場公開されている。米国ではタランティーノ映画史上最大のヒットとなった本作は日本でも出足好調のようだ。

強烈な性格俳優だったレオナルド・ディカプリオ

ジャンゴ 繋がれざる者

 相も変らぬ映画オタクぶりで楽しませてくれているこの作品で、タランティーノは「パルプフィクション」以来2度目のアカデミー脚本賞を先日受賞した。

 また賞金稼ぎのドイツ人を演じたクリストフ・ヴァルツも、タランティーノの前作「イングロリアス・バスターズ」以来2度目のアカデミー助演男優賞を受賞した。

 今回、この賞には、ロバート・デ・ニーロ、トミー・リー・ジョーンズなど、主演賞以上に大物ばかりがノミネートされていただけに、受賞後のヴァルツはひときわ感慨深げだった。

「黒いジャガー」の再映画化でシャフト役を演じたのは、今回農園で奴隷管理をする古株黒人を演じたサミュエル・L・ジャクソンだった

 賞とは無縁だったものの、人気者レオナルド・ディカプリオの「怪演」ぶりも注目だ。冷酷無比なるミシシッピーの農園主を演じているのを見ていると、この男が単なる二枚目俳優ではなく、実は強烈な性格俳優であることがよく分かる。

 その農園主が夢中になっているのが「マンディンゴ」と呼ばれる死にさえ至ることのある黒人奴隷同志の格闘技。奴隷の中でも特に屈強なことで知られる民族の名をそのまま競技名としたものだ。

 「マンディンゴ族(マンディカ族)」については、今戦時下のマリ共和国で昨年4月政変が起きたとき、ご紹介している(「米国大統領の光と影(2)」)。西アフリカに広く住み、かつて栄華の極みにあったマリ帝国から続く血筋ながら、奴隷狩りで米国へと多くが連れ去られ、過酷な運命をたどってきた民族である。

 そんな奴隷たちの無念の歴史を、映画の中でひっくり返してしまえ、というのが今回のタランティーノ映画のテーマ。自由の身となった元奴隷が賞金稼ぎとなって、差別の本場南部の白人たちを文字通り血祭りに上げる痛快作である。

 1831年に、ナット・ターナーという黒人奴隷が起こした反乱はあったが、最終的には処刑されてしまったように、この映画のような史実は知られていない。もしかしたら、あったのかもしれないが、少なくとも白人が伝える歴史で語られたことを私は知らない。

 そして、奴隷解放宣言が出された後でも、生産手段を持たない元奴隷は、差別意識の強く残った米国社会、特にそれを骨抜きにするような差別法が存在した南部では、「シェアクロッパー」と呼ばれる奴隷的労働に従事する者も少なくなかった。