マット安川 中国・中東のスペシャリストである宮崎さん。長きにわたる現地取材から読み解ける、現在の中国の国内事情や中国から見た世界情勢などをご紹介いただきました。

 現地から見たかの国の戦略、環境、実態のルポは、真に迫る生々しさがあります。日本広しといえども、宮崎さんのような真の意味での「国際評論家」はそうはいない、とさえ思ってしまいます。

中国にとっても、北朝鮮は不気味で扱いづらい国

「マット安川のずばり勝負」ゲスト:宮崎正弘/前田せいめい撮影宮崎 正弘(みやざき・まさひろ)氏 (右)
評論家、作家。国際政治、経済の舞台裏を解析する論評やルポルタージュを執筆。中国ウォッチャーとしての著作の他、三島由紀夫を論じた著書もある。
(撮影・前田せいめい)

宮崎 5月に大連を訪ねた時のことです。食事に行こうとバスに乗っていたら、繁華街の真ん中の交差点で突然、立ち往生しました。要人保護のためとかで、信号が30分も変わらないのです。

 その後、黒塗りの車が48台も猛スピードで通り過ぎました。驚いたことにはその帰り道にも翌日の朝にも、通行止めで30分以上待たされました。こうまでして守る必要のある要人は誰かと思っていたら、北朝鮮の金正日書記長でした。

 どうして中国は彼と北朝鮮をこれほどまでに大事にするのか?

金総書記、訪中で6か国協議復帰に前向きな姿勢 新華社

中国北京で胡錦濤国家主席との首脳会談に臨む北朝鮮の金正日総書記。(中国中央テレビの映像)〔AFPBB News

 以前は中国が強硬にものを言って北朝鮮を締め付けるということがありました。しかし、今の中国の指導者は穏和な人が多いこともあってか、思い切った態度に出ません。温家宝さんもポスト胡錦涛と言われる習近平さんも、わざわざ訪問して宥めたりしています。

 1つには中国にとっても、北朝鮮という国が何をするか分からない不気味な存在だからでしょう。何より、核兵器を持っていることが大きい。日本を攻撃するためと言われていますが、情勢によっては中国に向けてミサイルを発射する恐れがないとは言えません。

 仮に金正日体制が崩壊したら、大勢の難民がどっと押し寄せかねないという懸念も影響しているはず。中国も北朝鮮の扱いにほとほと困っているのです。

菅氏は財務大臣として景気回復のために何をしたのか?

 新総理に就任した菅(直人)さんに関して、まず検証すべきだと思うのは、財務大臣だった彼が日本の景気回復のために何をしたかです。今、国民が一番望んでいるのは雇用と収入が増えることですから、そこを経済政策の要にしないといけない。