カネ回りがよくなればすべてがうまくいく――。そんな経済至上主義を追求していたように思えなくもない。

 ヒラリー・クリントン国務長官がまもなく国務省を去る。2008年の大統領選でバラク・オバマ大統領と民主党の指名候補争いで破れたが、オバマ政権が誕生すると国務長官に就任。過去4年で80回近い外遊をこなした。これは歴代の国務長官(4年)として最多記録である。

米企業の利益を代弁したロビイスト

クリントン国務長官、2016年大統領選出馬に含み

バラク・オバマ大統領(左)とヒラリー・クリントン国務長官〔AFPBB News

 約150万キロ(95万マイル)近くも世界中を飛び回るという足で稼いだ外交は、ジョージ・W・ブッシュ政権で失墜した米国の信頼の回復に寄与した。クリントン長官の功労を関係者に聞くと、ほとんどの人が「よくやったと思う」と返答する。

 ただ意外にも、ワシントンのインサイダーからは協調的な平和外交を推し進めた国務長官というより、米企業の利益を代弁したロビイスト的な役回りを演じた人だったとの見方が強い。

 イラク戦争は一応終結し、アフガニスタンでの戦闘も収束しつつある。しかしシリア内戦には積極的に関与せず、国際テロ組織との戦いにも終わりが見えていない。

 それでは米企業の利益の代弁者という指摘はどういうことなのか。国務省は日本で言えば外務省である。クリントン長官は外務大臣というより、むしろ経産大臣の立場を担ってもいたというのだ。

 その真意が2011年7月の演説に見て取れる。長官が首都ワシントンで開かれたグローバルリーダーシップ連合の会合に姿を見せた時のことである。

 「米国の外交というのは国家再生の力にならなくてはいけません。それを実現するためにはまず、危機に瀕している米企業を救う意識を持つことが大切です。つまり米企業が他国において、多くの事業の入札を勝ち取れる環境を整えなくてはいけない」

 「米国以外の国は、すでにその重要性に気づき、自国企業のために戦っています。しかし米政府はこれまで米企業のために汗を流してきませんでした。企業を見捨てるような状況だったのです」

 長官は国際ビジネスの重要性に気づいたかのような発言をした。