先人の経験が生み出した讃岐うどんの黄金レシピ

うどんの味を追究せよ!(前篇)

2012.11.26(Mon) 漆原 次郎
筆者プロフィール&コラム概要

 口の中をつるつるつるっと滑っていく。噛み切ろうとすれば、ちょっとした抵抗さえ受ける。うどんほど、舌や歯での感触が風味に直結している食べものは珍しいのではないか。

 うどんの中でも、麺としての特徴をいかんなく発揮しているのが「讃岐うどん」だ。いわゆる“コシ”の強さを大きな特徴としている。

 旅行で、あるいはビジネスで、香川県に行ったことのある人は驚きを持っているだろう。うどん屋の多いこと、そしてうどん味のレベルの高いことへの驚きを。

 香川県のうどん店の密度は、人口10万人に対して60店以上。これは全国平均の3倍にもなるという。激戦区ゆえのレベルの高さも不思議ではない。

 だが、小麦粉と水と塩ぐらいのシンプルな材料から、なぜ“美味しいうどん”はつくられるのだろう。そこには、人びとが長年にわたり培ってきた経験と、いまもたゆまぬ研究の成果がきっとあるにちがいない。

 そのよう考えを抱きつつ、今回は「讃岐うどんの味はどのようにつくられるのか」をテーマに、その歴史と科学を追っていくことにしたい。

 前篇では、うどんの歴史とその中での讃岐うどんの展開を追っていくことにする。うどんづくりにも先人の智慧があるはずだ。後篇では、香川県内でうどんの製麺機づくり、麺の製造、うどん屋の経営、さらには「うどん学校」までを手がけている「大和製作所」社長の藤井薫さんに、うどんの味を決めるものは何なのかという根源的な疑問をぶつけてみたい。

うどんと冷麦は兄弟の関係?

 うどんは小麦粉でできた太い麺だ。現在ではそれが当然だが、歴史をたどるとこの形になるまでの変遷があることに気付かされる。

 小麦粉を長細い形にした食材には、かつて「索餅」という名が付いていた。「むぎなわ」あるいは「さくべい」と読む。

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1975年生まれ。神奈川県出身。出版社で8年にわたり理工書の編集をしたあと、フリーランス記者に。科学誌や経済誌などに、医学・医療分野を含む科学技術関連の記事を寄稿。日本科学技術ジャーナリスト会議理事。著書に『日産 驚異の会議』(東洋経済新報社)、『原発と次世代エネルギーの未来がわかる本』(洋泉社)、『模倣品対策の新時代』(発明協会)など。


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