防衛省は2013(平成25)年度概算要求に4輌の水陸両用強襲車「AAV-7」調達関係費用およそ30億円を計上する模様である。ちなみにAAV-7とは、アメリカ海兵隊をはじめとして世界各国(主として西側諸国)の海兵隊で用いられている水陸両用戦には欠かせない装甲車両である。
また、現在、陸上自衛隊の40名の隊員がアメリカ海兵隊第31海兵遠征隊に加わって、テニアン島で実施されている水陸両用戦(併用戦)の演習に参加している。さらに2011年秋には、海上自衛隊とアメリカ海軍は共同でアメリカ海軍水陸両用戦隊出動護衛訓練を実施した。
このように、ようやく防衛省・自衛隊にも水陸両用戦能力獲得の具体的動きが見られるようになった。
“空飛ぶワニ”になった水陸両用戦(併用戦)
「水陸両用戦(amphibious warfare)」というのは、次のようなステップで実施される軍事作戦を意味する。
(1)陸上戦闘部隊が海(大河・湖を含む)を海軍艦艇で作戦目的地沖合に進出する。
(2)海軍艦艇を前進基地とした陸上戦闘部隊が、海と空を経由して陸上の目的地に到達する。
(3)陸上戦闘部隊が作戦を展開する間、前進基地である海軍艦艇から作戦支援活動や各種補給活動を実施する。
このような軍事作戦は古代から行われていたが、航空機が軍事行動に用いられるようになるまでは、作戦実施部隊が海から陸に到達する手段は海を経由するしかなかった。つまりワニのように水を伝って岸に接近・上陸して陸の獲物を襲撃するというイメージから、このような作戦に「両生類(amphibian)」の名称を借用して「amphibious warfare」と名付けたのである。
航空機の発達により、海から接近する部隊を空から支援したり、海から海を経由して陸へ接近するだけでなく空をも経由するようになった。最近では海から敵の待ち受ける陸に殺到するタイプの水陸両用戦はほとんど実施されなくなった。