自動車製造業が日本を代表する産業の1つであることに異存のある人はいないでしょう。安くて品質が高い(故障が少ない)ということで、日本車は国内のみならず世界中で求められ、現在も高い人気を保っています。

 しかし品質の高さに関しては、近年疑問も出てきています。リコールが昔と比べて10倍ほど多いのです。

 国土交通省のホームページ「自動車のリコールと不具合情報」によると、国産車は1970(昭和45)年を境に急速にリコール数を減らします。前年76件あったリコールが70年には24件まで減少し、1990(平成2)年まで24件を超えることはありませんでした。

 その後、再び10件台までリコール件数は減りますが、97(平成9)年に42件に増え、以後、リコール数はどんどん増えて、近年は年間200件を超えています。

 問題は、これだけ多くのリコールを出すようになった原因は何なのかです。例えば昔よりも厳しい品質管理をやっているなら、以前は見過ごしてきたようなことも問題にしているので、リコールが増えるのは仕方がありません。より高い品質管理ができるようになれば、リコールはすぐに減少するはずです。

 しかし、部品の納入単価が著しく切り下げられ、“安かろう悪かろう”の部品が使われることが原因だとしたらどうでしょうか。リコール数は今後も高い水準を維持する、あるいはさらに増えることになると思われます。

 さて、あなたが自動車メーカーのバイヤー(購買担当)の仕事をしていて、上司から部品の購買単価の引き下げを命じられたとしましょう。引き下げ目標は、部品メーカーについてよく知る者なら、あり得ないほどの低価格だったとします。

 あなたは、リコールが発生する可能性が高くなることを憂慮し、上司にもう少し現実的な引き下げ目標を立ててくださいと反論するでしょうか。