従来の企業によるグローバル人材養成の取り組みとしては、社費でのMBA留学やちょっとした語学力教育支援などが主だったかと思いますが、今では様々な取り組みが見られます。
前回の『日本企業のグローバル競争力の危機!』では若干悲観的な見解も述べました。しかし、日本という国の性なのでしょうか、切羽詰まると一気呵成に創意工夫をし、あの手この手で現状打破を図る姿勢は素晴らしいと感じます。
そんな企業のグローバル人材養成活動を2回にわたってご紹介したいと思います。
社員を世界へ武者修行に送り出す企業プログラム
IHIは、幹部候補生向けにインドで2カ月間の英語研修を実施しています。
また、アサヒビールでは、社歴が浅い社員向けに1年間の「海外武者修行」研修(グローバル・チャレンジャーズ・プログラム)を行い、米国、中国、英国、オーストラリア、タイなどへ送り込み、若手の海外アレルギーの払拭を図っています。
シャープでは、2011年から3年間にわたり、若手200人ほどを新興国に派遣し、現地語や生活習慣を1~2年で習得させる取り組みを始めました。さらには幹部向けプログラムとして、新興国で一般家庭や店頭を訪問するといった現場重視の実践的な人材育成教育にも取り組んでいます。
ヤマハ発動機の海外市場開拓事業部は、たった1人で途上国へ赴任させ市場調査を任せていますし、YKKでは20代社員を中心に積極的に海外赴任をさせ、現地文化に親しんだ「土地っ子」を養成しています。そのために語学教育の補助や社内研修、異文化での勤務に対応するためのマネジメントトレーニングなど周到な下地作りを行っています。
グローバルカンパニーの象徴でもあるIBMでは、若手社員を南米やアフリカなどの新興国に1カ月間派遣し、各国のIBM社員とチームをつくり派遣先地域の抱える社会問題の解決策を提案させる人材研修を2008年から行っています。国際経験を積ませ、各国のIBMで幹部として働ける人材の養成を目的としています。
そしてローソンは、今年度から海外派遣研修制度を導入し、入社10年以内の若手社員を半年か1年間現地に送り、市場可能性を探ってもらうという野心的な試みを開始しました。
同じく資生堂でも、サムスンの「地域専門家制度」のように若手を現地に送り込み、住民として生活させてニーズを探らせる取り組みをしています。