6月26日、相当数の議員の反対はあったものの、社会保障と税の一体改革における消費税増税法案が可決され、衆議院を通過しました。

 数々のメディアで指摘されているように、今回の採決の最大の問題点は、「“主”であるはずの社会保障制度改革が先送りされ、それに従って決まる“従”のはずである、増税のみが先に決まってしまった」ということです。

 短期的な財政面は一息つくことができるのでしょうが、中長期的には社会保障給付の増加を抑えない限り、財政悪化は止まりません。消費税が10%になったところで、プライマリーバランスの二十数兆円もの赤字分を埋めるのには全然足りないのです。

 野田佳彦首相は「苦しいことだが国民に説明し、賛同を得るよう努力していく。こういう政治を実現したい」と発言して消費税増税法案の理解を求めました。

 しかし、首相が本当に国民に説明しなければならないことは「消費税増税」ではなく、「消費税増税の上に社会保障支出も減らさないと国家の財政の黒字化はできない」ということなのではないでしょうか?

 社会保障の給付制限や年金削減策について全く踏み込むことなく決定された今回の消費税増税は、消費税率を際限なく上げていくことになる近未来の序曲のように思えてなりません。

世代間の負担と給付のアンバランス

 医療分野では「後期高齢者医療制度」の改革が今回棚上げされました。

 そもそも後期高齢者医療制度が誕生したのは、現役世代の支払う保険料の実に50%近くが75歳以上の方々への拠出金となり、9割以上の健康保険組合が赤字に陥ってしまっていたことが発端です。そこから健保組合の老人保健拠出金不払い運動に発展し、約97%の健康保険組合が賛同したことから制度化されたのが、この制度です。

 現在、75歳位以上の人にかかる医療給付費は年間平均85万円です。一方、現役世代の人が利用する医療給付費は12万円程度と大きな開きがあります。