マット安川 日本の政治や経済、文化など、今ある姿を世界に多言語で発信されているジャーナリスト・原野城治さんが初登場。ご自身率いる「nippon.com」はじめ、田中角栄政権時代からの政局の変遷などについてもうかがいました。

消費税増税は世界が注視する「決められない日本の政治」の転換点

原野 城治(はらの・じょうじ)氏
ジャーナリスト、ニッポンドットコム代表理事。時事通信社の政治部記者・パリ特派員・解説委員、ジャパンエコー社代表取締役を経て現職。TBS番組「みのもんたの朝ズバッ!」コメンテーターや政府広報Web版論壇誌「Highlighting JAPAN through articles」編集なども務め、2008年3月イタリア政府から「イタリア連帯の星」カバリエーレ章受勲。(撮影:前田せいめい、以下同)

原野 野田(佳彦)総理は現在、6月21日の国会会期末に向けて、消費増税を採決しようと頑張っています。見通しはあまり明るくないですけれども、やらなくてはいけないと私は思っています。理由はいろいろありますが、1つは、日本の政治は決められないということです。小泉(純一郎、元総理)さんの後、毎年総理が代わっている。

 そのような状況で野田さんは昨年11月、仏カンヌで開かれたG20で「国際公約」として、財政再建をきちっとやりますと発言しました。

 消費増税によって日本経済に影響を与えるかもしれないし、国民生活に影響を与えるかもしれないけれども、国際公約した以上、もしやらなかったら「またか」、ではなく、「もういい加減にしろ」と、日本は世界から見捨てられてしまうという状況にあります。世界の見る目は厳しいと思います。

 私は消費増税が100%正しいと言っているわけではありません。ただ、高齢化社会で幅広く税金を取るために、消費税はある程度バランスのとれたものではないかと思います。

 国の借金は1000兆円、GDP比で219%です。社会保障費は90年代から現在までに2.5倍に増える一方で、税収は同じ時期に70%に減っている。この差が財政赤字になっているわけです。

 もし消費増税をやらない場合、何が起こるかというと、ハゲタカファンドなどが投げ売りしたり、円高が加速したり、債券市場の金利が上がっていくようなことが起こるのではないか。私が心配するのは、デフレが急に変わり始めると、インフレは足早にやって来るということです。

 もちろん、国民としては腹が立ちます。生活が厳しい人が大勢いる中で、消費増税の前にやることがあるだろうと。しかし、野田さんは政治生命を懸けると言ったんですから、本当にどこまでやるかしっかり見ていかざるを得ないと私は思っています。