ガブリエル・ガルシア=マルケス、マリオ・バルガス・リョサと並ぶラテンアメリカ文学の巨匠カルロス・フエンテスが、5月15日、メキシコシティの病院で死去した。

 メキシコの近現代史を題材とする作品で知られるフエンテス。その代表作の1つ「アルテミオ・クルスの死」は、非道なやり口で財産と名誉を得ていく元メキシコ革命兵士の姿が描かれている。

 過去と現在を行き来するフラッシュバックなど、オーソン・ウェルズの映画史に輝く1本『市民ケーン』(1941)に強く影響されているとも言われたものだった。

イエロージャーナリズムの影響力

キューバの街角

 そしてジェーン・フォンダ主演で映画化された「老いぼれグリンゴ」(映画の邦題は『私が愛したグリンゴ』(1989))もメキシコ革命が舞台。

 映画では、革命の最中、行方不明となった米国人アンブローズ・ビアスをグレゴリー・ペックが演じている。ビアスと言えば皮肉たっぷりの単語集「悪魔の辞典」で日本でもよく知られる存在。

 そして、メディア王ウィリアム・ランドルフ・ハーストの持つサンフランシスコ・エグザミナーなどでコラムニストとして鳴らした人物でもあった。

 ハーストをモデルにしたと言われる映画『市民ケーン』には、主人公がセンセーショナリズムで新聞の売り上げを伸ばす姿がある。

 こうしたことは、扇情的な記事を載せることで発行部数を競い合うハーストの「ニューヨーク・モーニング・ジャーナル」紙とジョセフ・ピューリツァ―の「ニューヨーク・ワールド」紙が、「イエローキッド」なるコマ漫画の取り合いをしたことから、「イエロージャーナリズム」と呼ばれるようになった。

 『私が愛したグリンゴ』には「キューバか。あれは新聞が起こしたもので、得をしたのはほんの一部の奴らだけさ」というビアスの有名な台詞がある。

 キューバ、プエルトリコ、フィリピンなどを舞台とした1898年の米西戦争開戦には、そのイエロージャーナリズムが一役買っていた。