防衛大臣が交代した直後の6月6日、防衛省で1年半をかけて議論を重ねてきた「防衛生産・技術基盤研究会」の最終報告書が大臣に提出された。私も委員の一員として参加してきただけに感慨深い。

 内閣改造の影響でこの日に予定通り報告書の提出と記者発表が行われるかどうか当日の朝まで分からなかったために、報道各社への連絡もままならず、今のところ新聞等でも論評には至っていないようなので、ここで少し触れてみたい。

日本の防衛装備品の基盤は極めて不安定

 そもそも、このような研究会が立ち上がった経緯は、「厳しい財政事情により防衛関係費の伸びが期待できないこと」「装備品の高精度化により、維持整備費用が購入にかかる経費を上回っていること」などから装備品を担う企業が圧迫され、2003(平成15)年以降に防衛産業から事業撤退・倒産した企業が102社にも上っている背景がある。

 そこで、これまでは「買うだけ」というスタンスであった防衛省としても、他省庁との連携の上で、この難局にいかに対峙するかを考えなければならない状況になっていたのだ。

 今回、様々に実態調査を進めていく過程で、委員の中から「なぜ、こんなにひどい状況でガマンしていたのだ」という声が上がる場面もあったほど、企業が担う負担の驚くべき実態が明らかになった。

 そうした実情がなかなか表面化してこなかったのは、この部門に携わる方々が、非常にガマン強い(あるいは麻痺している!?)ことも一因にあるかもしれないが、最大の原因は、わが国には「防衛産業」というものがないことであろう。平均すると、企業にとって自衛隊向けの売り上げは10%ほどの比率でしかない。

 他部門、つまり民需品分野が安定していれば、さして問題はなかったのだが、昨今の景気低迷で企業に余裕がなくなってきた。支えることができそうにない部門として槍玉に挙がったのが、防衛に関する仕事である。