今回は、ちょっと変な横道から入ってみましょう。

 子供の頃、算数や数学の問題がさっぱり分からず、あとで正解を見て、「なぁんだ、こんなにシンプルな話だったのか、ちぇっ!」とか思ったご経験はありませんか? 僕はそんなのだらけでした。

むしろ難しい「シンプルな思考」

 試験時間中に同じことを思いつけば、誰も苦労しないのですが、何か問題文は難しそうなことが書いてあったりする。ああでもない、こうでもない、などと考えるうちに頭の中で音楽など聞こえてきた日には、もうアウトです。

 考える気になってない。果たして無情のベルは鳴り、答案用紙は回収され、しばらく経つと無残に赤い記号がつけられたものが返却されてくる・・・。

 こういうとき、概して僕たちは、物事を難しく考えすぎているように思うのです。最も典型的な例を挙げるなら、中学の数学で習う図形、「幾何」があります。

 いまここで、三角形の合同だの、角度がどうしたの、という図形の具体的な話は出しませんが、中学の幾何、より正確に言えば「ユークリッド幾何学」の初歩では、すべての論理を一からその場で組み立てることを学びます。

 きちんと論理が整合していればよし、もし少しでも矛盾があれば、そこで話はストップします。

 こういう厳密な話では「物知り」は役に立ちません。

 「こんなもの知ってるよ」という、別の話が紛れ込んでくることはないわけです・・・いや、まあ実際には「裏技」で近道ができる、みたいなことも、進んだ段階ではありますが、多くの中学生にとって、初歩の幾何の証明のたぐいは、あまりにシンプル過ぎて逆にとっかかりがなく、かえって難しく見えてしまうことがあるようです・・・と言うか、僕もそういう記憶があります。

 純粋に与えられた条件だけで考えてみる、というのは、慣れないと実はなかなか難しいことでもあるのです。