マット安川 今回のゲストは評論家の西村幸祐さん。80年代の日本黄金期に萌芽する今の政治・経済・文化の問題を読み解いていただきました。

中日新聞の意見広告掲載拒否を糺弾する!

「マット安川のずばり勝負」ゲスト:西村幸祐/前田せいめい撮影西村 幸祐(にしむら・こうゆう)氏
ジャーナリスト、作家。音楽雑誌編集などを経て、主にスポーツをテーマに作家、ジャーナリストとしての活動を開始。2002年の日韓ワールドカップ取材以降は拉致問題や歴史問題などに関する執筆活動を行い、2011年4月『JAPANISM』を創刊。近著に『幻の黄金時代 オンリーイエスタデイ'80s』(祥伝社刊)がある。(撮影:前田せいめい、以下同)

西村 最初にお伝えしたいのは、中日新聞の「意見広告掲載拒否事件」についてです。

 5月中旬、河村たかし名古屋市長の南京発言を支持する意見広告を出すことになっていました。広告主は南京の真実国民運動という運動体。

 安倍晋三元総理、石原慎太郎東京都知事、上田清司埼玉県知事ら8人が呼びかけ人となり、先週(4月30日からの週)の時点で国会議員60人以上が賛同者として署名していたものです。

 中日新聞は、いったんは決まっていたこの広告の掲載を、社論に合わないと拒否してきました。

 河村市長は南京でそういうことがあったのかどうなのか、議論しましょうと言い、この意見広告の趣旨は彼のその発言を支持しますというものでした。不当な圧力に議論が封じられるのはよくない、自由な言論が保障される中で冷静に研究して議論すべきだ、と。

 問題は中日新聞の社論とは何か、です。自由な議論で真実究明をと訴える広告がそれに合わないということは、自由な議論を認めないということになりますよね。

 名古屋を中心とするエリアにおいて、中日新聞のシェアは圧倒的です。もしこの新聞しか読んでいない人がほとんどだとしたら、河村市長ってのはとんでもないやつだという意見しか聞いていないわけですよ。

 今回の意見広告はそういう人たちへのメッセージとして、とても重要だと思います。それを一方的に断ったというのは、暴力としか言いようがないですね。

 南京の真実国民運動は、まず中日新聞を東京地裁に提訴し、意見広告を掲載しろという仮処分申請を行います。中日新聞の社長に対する公開質問状を出すなど、ほかにもいろいろな手段で訴えていく方向です。

 掲載を前提に話を進めていたわけですから、商取引上の契約違反という側面もある。いずれにしても、場合によっては中日新聞の不買運動に発展する可能性もある事件だと思います。

国益に資する情報に背を向ける日本のメディア

 日本の言論機関はものすごい危険な状況になっている。意見広告掲載拒否事件は象徴的な出来事だと思います。