マット安川 日本屈指の中国ウオッチャー・宮崎正弘さんをゲストに迎え、東京都の尖閣購入意思表明を受けてのアジア各国の情勢や、国際紙で話題の「重慶の政変」についてお伺いしました。

石原発言に対し作為的ニュースを流すマスコミ

「マット安川のずばり勝負」ゲスト:宮崎正弘/前田せいめい撮影宮崎 正弘(みやざき まさひろ)氏
評論家、作家。国際政治・経済の舞台裏を解析する論評やルポルタージュを執筆。中国ウォッチャーとしての著作の他、三島由紀夫を論じた著書もある。近著に『中国が日本人の財産を奪いつくす!』(徳間書店)『自壊する中国 ネット革命の連鎖』(文芸社)『震災大不況で日本に何が起こるのか』(徳間書店)『オレ様国家 中国の常識』(新潮社)など。 (撮影:前田せいめい、以下同)

宮崎 石原慎太郎東京都知事の尖閣諸島の買い取り発言について、基本的理念から言うと、これは自治体の問題ではなく、国の問題です。

 そもそも国がやっておくべきことだったわけです。ところが国が何もしないから、石原さんは強いインパクトを狙って、問題提起したと見ていいんじゃないでしょうか。

 一方、今回の発言に対して、作為的な反応をしている某マスコミがあります。テレビのニュースで街の反応を取っていたんですけど、おそらく世論の8割方は賛成しているのに、誰か反対意見の人がいないかとじっと待っていたのではないか、そういう作為を感じましたね。

 これは日本人として恥ずかしいことです。逆に言うと、そこまで中国の情報操作が進行しているという怖い側面もありますよね。だって、自分の領土を取られる恐れがあるのに、それに文句を言ったら、それはおかしいなんて言う変な国はほかにないでしょう。

天安門事件に匹敵する大政変「重慶の変」、権力闘争の行方は

 石原さんの発言に対して中国はどう反応するか、いくつかのマスコミから電話がありましたが、私は、中国はいまそれどころじゃありませんよと答えました。

 中国では現在、天安門事件に匹敵するくらいの大政変が起きているんです。薄熙来(前重慶市共産党委書記)が失脚した、いわゆる「重慶の変」です。

 ことの起こりは今年2月6日、四川省成都にあるアメリカ領事館に、重慶の公安局長で副市長だった王立軍という人が駆け込んできたことに始まります。逃げ込んだとも言えます。

 彼は自分のボス、つまり薄熙来がいろいろな汚職や殺人事件にも関与していると言って、証拠書類とビデオテープを持って、それと引き換えに政治亡命を求めた。アメリカの思惑で、この亡命は未遂に終わりましたが。

 この公安局長は一方で、アメリカ領事館に駆け込む前に、重慶のイギリス領事館にも駆け込んでいるんです。ここに持ち込んだ情報というのは、昨年11月14日に重慶のホテルであるイギリス人が変死した事件に関するものです。