1990年代後半以来、より正確に言うなら北朝鮮で「建国の父」金日成主席が死去してから、日本の世論は同国によるミサイル発射実験や「核」開発に振り回され続けてきた。2011年12月に死去した「2代目」金正日総書記による“瀬戸際外交”にヒヤヒヤさせられることがしばしばだった。

 日本海に向け、次々に開発される「ノドン」「テポドン」のような弾道ミサイルを発射するデモンストレーション。とうとう2009年4月5日には、我が国の東北地方上空を越えて太平洋までミサイル(北朝鮮側は「人工衛星の打ち上げ」と発表)が飛ばされた。

 日本側では、弾道ミサイル迎撃が可能な「ペイトリオットPAC3」対空ミサイルやイージス艦を東北地方と周辺海域に配置するなど、かつてない警戒態勢を取ったが、世論はそれ以上に沸騰した。

 そして、2010年3月は韓国海軍艦艇「天安号」撃沈事件が起き、11月には境界線が未確定の韓国~北朝鮮周辺海域での米韓合同演習への「報復」としての大延坪島に向けた北朝鮮軍の多連装ロケット弾砲撃事件が発生。

 振り返ってみるなら、金正日氏の執権末期に向かってますますキナ臭い状況が進んできたように思える。

ミサイル1発で日本が崩壊する?

 筆者は、金正日政権時代、そして後を継いだあまりに若い金正恩大将の執権の下での北朝鮮が北東アジアの安全保障情勢を揺さぶる存在であり続けていることを否定しない。しかし、ここ十数年の我が国での北朝鮮に関するマスコミ報道やテレビ出演する「軍事評論家」(?)のコメントを見聞して、筆者としてはうんざりさせられることが多い。

 経済的不振から国内に飢餓状況まで生まれてあえいでいる北朝鮮について、まるで「何をしでかすか分からない危険な軍事国家」というイメージばかりが語られるからだ。

 「北朝鮮のミサイルが日本に飛んできて落下すれば、日本は崩壊する」

 これは、それなりに有名な「軍事評論家」がコメンテーターとして出演して述べた言葉そのものだ。こんな発言を公の場で発言する者が、なぜ「軍事評論家」、いわば専門家呼称を名乗るのか、まったく理解に苦しむ。