マット安川 今回のゲストは作家で元外交官の佐藤優さん。月に何冊もの出版物や新聞や雑誌記事で、さまざまな問題を解説しておられる佐藤さんに、国防や外交問題をはじめ、領土問題の最新情勢などをうかがいました。

北朝鮮の「人工衛星」は金日成生誕100年の打ち上げ花火

「マット安川のずばり勝負」ゲスト:佐藤優/前田せいめい撮影佐藤 優(さとう・まさる)氏
元外交官、文筆家 インテリジェンスの専門家として知られる。第38回大宅壮一ノンフィクション賞などを受賞した『自壊する帝国』の他、『獄中記』『国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて』『3.11 クライシス!』など著書多数。近著に『世界インテリジェンス事件史』。(撮影:前田せいめい、以下同)

佐藤 北朝鮮はミサイルを「人工衛星」と言い張っていますが、これはずるい言い方です。国際法上、あらかじめ落ちる場所を伝えておけば、人工衛星の打ち上げのために公海や上空を利用することに問題はありません。

 日本が文句をつけたら、自分たちだってやっていることじゃないかと諸外国が非難してくれるはず、という計算があるんですね。

 今回、北朝鮮がそれを打ち上げるのは、要するにお祝いムードを盛り上げるためです。4月15日は金日成の生誕100年ですから、その前に花火を上げよう、と。

 同じようなことは過去にもしていて、そのたびに「人工衛星打ち上げに成功した」と発表するんですけど、そんな衛星を確認した人はいない。今回も失敗します。それでも同じように、成功したとウソをつくでしょうね。

 単にお祭りを盛り上げようということだから、みんなそう文句を言わないだろうと思っていたら、ロシアや中国も厳しい反応をしたので、あちゃーと思ってるんじゃないですか。

 食糧支援を止められたら困りますから、終わったら「悪気はないんだから勘弁して」と言わんばかりのモミ手外交を展開するだろうと思います。

語学力は中学生レベル・・・外交官の能力低下を憂う

 在露日本大使館の公使が、ポノマリョフという反体制活動家と会っていた様子の隠し撮り映像が公開され、物議を醸しています。映像はユーチューブにも載っていますが、私はそれを見て外交官の能力低下はここまで来たかと、唖然としました。

 まずロシア語が下手。英語でいえば中学3年くらいのレベルです。加えて相手の情報をまったく調べていない。ああいう話は個室ですべきなのに、公の場所でやっているのもお粗末です。

 反体制派と付き合うなら、一方で政権側の偉い人とも付き合っておくのが外交官の常識なのに、彼はそれもしていません。

 国は1人の外交官を作るために、1500万円から3000万円の国費を投入します。3年間も仕事を一切せずに研修させてもらいながら、言葉もろくにしゃべれない。日本の恥です。