「来年も、4月最初の日曜日にお会いしましょう」

 この時期、靖国神社の境内ではそんな挨拶が交わされることが多い。かつての戦友たちが集まっての慰霊祭などが集中するのは、やはり桜の咲く頃なのだ。

戦場で活躍し命を落としたのは兵士だけではなかった

 今年から、これまで別々の日時だった戦没軍馬・軍犬・軍鳩慰霊祭が合同で執り行われることになった。

 遊就館の前にある馬と犬、そして鳩の慰霊像近くに、参列者が集まっていた。本来ならば桜の花びらがヒラヒラと散る中で・・・という心積もりであったが、前日は寒の戻りで大嵐。開花は間に合わなかったが、当日、晴れ渡っただけでも天佑神助(てんゆうしんじょ)と言えそうだ。

 国歌斉唱の後、神事は厳かに始まった。祝詞は、戦の庭に赴いた健気な動物たちそれぞれの活躍ぶりが窺い知られるものであった。

 先の大戦においては、再び懐かしい故郷に還り得たものは皆無に等しい。馬も犬も鳩も多くが戦場に落命したのである。

 屍を野辺に晒した「戦友」には、墓も仏壇もない。靖国での再会だけがその霊を慰める唯一無比の約束だ。

 その約束を果たすために、遠方から杖をついて毎年、多くの関係者が来ていたが、最近はやや参列者の年齢も若いように見受けられる。おそらくご家族の代参なのだろう。

 その日は南方戦線の戦友会も行われていたようであったが、馬や犬などが活躍したのは大陸戦線が主であったことから、この集まりはさらに時代を遡ることになるわけだ。

前線の兵士たちの大きな支えだった軍用犬

 筆者は最近、『ありがとう「金剛丸」 星になった小さな自衛隊員』(ワニブックス)なる一冊を上梓した。