最近、巷で「陸上自衛隊を海兵隊化したらどうか」などという話を、しばしば耳にするようになった。

 のっけから結論を言ってしまうと、これは「カメラマンを辞めてアナウンサーになろう」みたいな、かなり無理のある話である。

 この「海兵隊化」論を言っている方の中には、「海兵隊的な装備を保有」することを指しているケースもあり、全てを否定するわけではないが、少なからぬ人が、そもそも「海兵隊とは何か」をよく理解しないまま、勢いで述べているのではないかと思われるふしがあるのが心配だ。

 海兵隊とは何か・・・。彼らは、自らで陸・海・空、そして後方支援も一体的に運用する独立軍種であり、自前の戦闘機や海軍の空母などを用いて、究極の自己完結能力を発揮する前方展開部隊である。

 一朝有事となれば、まず先に海兵隊が展開し、その後、陸軍が入るという段取りになる。つまり、そもそも両者は違う役割を担っているのだ。

日本の島を奪還しに行くのが米海兵隊でいいのか

 では、なぜ今、この「海兵隊化」なる話が出てきたのか。それには、昨今の中国の海洋進出への対処として、わが国が島嶼(とうしょ)防衛機能向上の必要に迫られていることがある。

 また、こうした中、唯一無比の頼りであった米軍が新しい国防戦略に転換することになったこともあるだろう。さる1月5日に明らかにされた米国の国防戦略の見直しは、中国による軍事的台頭を受け、いよいよ正面からそれに対抗すべく態勢を築くというもので、日本の役割も大いに期待されるであろうものであった。

 また、中国の弾道ミサイル「DF21」が沖縄を射程に入れたため、海兵隊をグアムとオーストラリアに分散配置する方針は、わが国がこれまでのように米国依存体質では立ち行かないのではないかと、予感させるものであった。