大阪市の橋下徹市長が就任早々から鋭くメスを入れている。あの調子では恐らく反対勢力からの目に見えない攻撃も激しいに違いない。例えば先日、自民党の元国会議員の先生方にお会いしたが、激しい口調で橋下批判をされるのには違和感を覚えた。
その批判も単にビジョンが見えないという曖昧なもので、批判の口調が激しいほど、議員も公務員と同じく、現状維持の既得権益者なのだという印象を強くした。
さて、前回北海道のケースで好評を得た地方財政の第一人者、大和田一紘さんの地方論は今回、静岡県と東京都に飛ぶ。かつてどうしようもなかった地方自治体があるキッカケで見違えたように甦る。
日本の財政は国も地方も大変だと言うけれど、こうした事例を見れば、対処不可能なことではない。つまりは、政治に携わる人たちの心構えの問題である。現状を正しく把握して必ず改革しようという強い意志があるかないかだ。
「落ちこぼれ」と言われた貧乏自治体の財政力指数がアップした理由
川嶋 前回、旭川はせっかく旭山動物園という人気スポットがあるのに、動物園を見た後はすぐ移動してしまうという例がありました。滞在時間を増やしてお金を落としてもらうには、どうしたらいいんでしょう。
大和田 いいお手本が静岡の掛川市です。議員や市民の研修をよく手伝うのですが、市役所を見せるだけで半日かかります。
あそこは公共施設は学びの施設だという考え方で、庁舎も有名なんです。6階まで吹き抜けで、上から順番に見て回ると、各フロアで職員の働く姿が全部見える。
例えば清掃課であればどういう分別をすればどんな風にコストが安くなるとか、セクションごとに学べるようになっています。そんな具合だから、一度連れていくと最低でも1泊してもらうことになる。それでこそ町のいいところを分かってもらえるんです。
この手の研修は普通2時間ぐらい話を聞いて、あとは資料をもらっておしまい。それじゃただ移動するだけだから鉄道やバス会社が儲かるだけですし、研修の効果も期待できません。
川嶋 そういう庁舎を造れるってことは、お金があるんでしょうね。
大和田 三十数年前までは貧乏自治体でした。「落ちこぼれの掛川」と言われていたほどです。当時、市の有力者たちは政争に明け暮れていて、新幹線の駅も高速のインターチェンジもできなかった。単なる通過点の町でしたから、若者たちはどんどん出ていきました。
そういう状態から抜け出そうと、ここの人たちは発想を変えたんです。一言でいえば、中華思想。自己中心的に考えようってことですね。
掛川を真ん中と考えれば、静岡と浜松の間、東京と大阪の間だ、ということはどちらからでも途中下車できる町じゃないか、と。
掛川が変わったのは、森林組合の組合長だった榛村純一氏が1977年に市長になってからです。どうすれば地域振興ができるかと考えて、話し合いをするために一軒一軒、市民の家を回った。