マット安川 今回は経済学博士の小山和伸さんを迎えて、現政権が増税の前にすべき喫緊の課題から、ユーロ問題などの世界経済、原子力技術をめぐる大学でのエピソードなど、縦横無尽なお話をいただきました。

ドルの一極支配に対抗するユーロは簡単になくならない

小山 和伸(おやま・かずのぶ)氏
神奈川大学経済学部教授。経済学博士(東京大学)。横浜国立大学経営学部卒業。東京大学大学院経済学研究科博士課程修了。専門分野は、経営管理論、組織論、戦略論、技術経営論。著書に『救国の戦略』(展転社)、『戦略がなくなる日』(主婦の友新書)など。(撮影:前田せいめい、以下同)

小山 ユーロの今後について悲観的な見方をする人が多いようですが、私はEU諸国がそう簡単にあの共通通貨を手放すことはないと考えます。

 アメリカのドル一極支配には、ドイツもフランスもいじめられてきました。いまだにアラビアの石油はドルじゃなきゃ買えないことなどは象徴的です。イラクはそれに逆らってユーロでも売ると言いましたが、イラクがアメリカに叩かれた最大の理由はこれではないか。

 ドルの一極支配というのは非常に強烈で、基軸通貨とは打ち出の小槌です。紙幣を増刷すれば、それがそのまま世界に通用する本源的価値を持ってしまう。これには石油とのリンクが非常に重要だからこそ、アメリカはそれを守ろうとするんです。

 ドイツはそれ以前もかなりの経済国でしたが、1国では対抗できないので欧州各国と連携して米ドル一極支配に対抗しようとした。それがユーロの深い部分の動機なのです。

 ユーロの現状は、構成国の中から共通通貨の強みに甘えたわがままなところが出てきたということでしょう。ギリシャなど公務員が20%を占める、公共施設の無駄遣いが目立つ国です。

 消費税を上げて足りない分を補うわけですが、無駄遣いをやめないで税収だけを上げてもまた足りなくなるのは目に見えている。一部の国のそういう現状が、ヨーロッパ通貨全体の足を引っ張っているのです。

IMFが消費税増税を求めた裏には財務省の手回しアリ

 人のいい日本人のこと、大震災もあったことだししょうがないかと増税に応じるムードが強まっています。しかし、金の使い方を変えないで税金だけ上げるという意味では、やろうとしていることはギリシャと同じです。