ギリシャの財政危機に端を発した欧州の信用不安は、世界同時株安に発展した。2008年のリーマン・ショックを想起させる事態に先進7カ国(G7)も対応に乗り出したが、市場の不安心理は収まらない。
国債の大量発行を続ける日本は、国家財政への信認喪失のコストがいかに高くつくかを示したギリシャ・ショックから学ばなければならない。
「質への逃避」が再燃
ゴールデンウイーク明けの東京市場を見舞ったのは、混迷するギリシャ問題だった。リスク資産の株を売却して米国債など安全資産を買う「質への逃避」が加速した欧米市場の株価急落が日本にも波及して、日経平均株価は6~7日の2日間で700円近く下落。為替は一時、対ユーロで8年5カ月ぶりの110円台半ば、対ドルで87円台まで急騰した。
2009年夏から約半年間くすぶり続けているギリシャの財政危機は、5月2日、欧州連合(EU)のユーロ圏15カ国(ギリシャを除く)と国際通貨基金(IMF)が3年間で1100億ユーロ(約13兆7000億円)の緊急支援をまとめ、沈静化に向かうかに見えた。しかし、支援の条件となる緊縮財政策にギリシャ国民が反発。市場はその実現性を危ぶんでいる。
さらに国家の信用度合いを示す「ソブリンリスク」への懸念は、同様に巨額の財政赤字を抱えるポルトガル、イタリア、スペインに伝播。ギリシャを加えた「PIGS」と呼ばれる南欧4カ国の長期金利は急騰した。
世界の金融市場の混乱を受け、オバマ米大統領は5月7日、メルケル・ドイツ首相と電話で緊急会談。G7財務相も電話を通じて異例の臨時会合を行い、緊密な連携を確認した。
国家的モラルハザード
ギリシャは観光と海運以外にめぼしい産業のない欧州の小国だ。その経済規模はユーロ圏諸国のGDPの2%程度に過ぎない。ユーロ圏諸国が支援に乗り出せば、ギリシャ問題をボヤのうちに消火するのは難しくないはずだった。