先日、ある会社で大規模な基幹システム導入プロジェクトが終了し、なんとかカットオーバーにこぎつけた。聞くところによれば、なんと5年がかりのプロジェクトだったそうである。

 経営陣のお墨付きの、鳴り物入りのプロジェクトだったという。他のプロジェクトは予算を削られたり、延期されたりするなど、かなりの影響を受けたようだ。

 5年という月日は長い。この間、どれだけのことが起こっただろうか。リーマン・ショックで世界経済の勢力図が変わり、消費者の志向が変わり、成長業種も変わり、勢いのあった多くの企業が消滅したりもした。きっとこの企業の経営環境も大きく様変わりしたことだろう。

 しかし結局、何とか稼働させそのたシステムは、基本的に5年前の業務プロセスを踏襲したものとなったそうだ。比較的変化の少ない基幹業務を対象としているとはいえ、この5年間は業務が進化しなかったとも言える。

なぜ現行業務のままでとどまってしまったか

 当初は、決してそういうつもりではなかったという。これからの競争力強化のために、あるべき業務プロセスを描き、それを反映させたシステムを志向していた。いわゆる「BPR(Business Process Engineering)」である。

 ところが、いざ新しい業務プロセスを検討し、システムを設計してみたら、いくら時間をかけても社内で合意を得られるレベルに至らなかった。

 時間と費用だけがいたずらに浪費されていく。「これ以上、時間をかけるのはまずい。まずは最低限、現行業務は実現しよう」ということで、スコープが「As-is(現状)」を対象としたものに縮小された。

 こうなってしまった経緯を聞いてみると、以下のようなことであった。