昨日に引き続き、最近『日本大災害の教訓―複合危機とリスク管理』を出版した竹中平蔵氏へのインタビューをお送りする。
法人税減税、規制緩和・・・当たり前のことをやれば日本経済は強くなる
川嶋 経済をよくすればいいというお話でしたが、どうすればよくなりますか。
慶應義塾大学総合政策学部教授、グローバルセキュリティ研究所所長。一橋大学卒業後、日本開発銀行、大蔵省主任研究官、ハーバード大学客員准教授などを経て現職。2001-2006年小泉内閣において経済財政政策担当大臣、金融担当大臣、郵政民営化担当大臣、総務大臣などを歴任。(撮影:前田せいめい、以下同)
竹中 当たり前のことを当たり前にやればいいんです。小泉内閣が終わった2006年9月末、日本の株価は1万6000円でしたが、今はその半分です。
この3年間、世界の株価はどう動いたかというと米国は39%の上昇、ドイツ、英国すら25%ほど上がりました。
日本だけが異常なのは、異常なことをやっているからです。
典型が雇用調整給付金。本来ならリストラして、別の成長産業に行ってもらうべき人を会社に抱え込ませたりしたら、経済全体が弱くなるに決まっています。
モラトリアム法もそう。金融機関は中小企業が抱える借金の返済猶予にほとんど無条件で応じないといけません。今やそうしたケースが100万件も積み上がっていますから、不良債権予備軍は1.5倍になったと言われています。
そして労働規制です。労働者派遣を禁じることで、雇用をしにくくしている。海外に出ていく企業が増えるのも当然でしょう。
こういう日本経済を弱くする政策をやめて、強くすることをすればいい。具体的には法人税を下げる、規制緩和するといったことです。そういう普通のことをやれば日本はすぐに強くなります。技術があり資本があり人材もいるんですから。
川嶋 今の円高についてはどうご覧になっているのでしょう。
竹中 これは誤解されているんですけど、為替は米ドルとの関係だけでなく、ほかの通貨も考慮した実質実効為替レートで判断する必要があります。
1995年に1ドル=79円をつけたことがありますが、これを今のレートに当てはめると55円くらいになる。当時と比べれば、今の水準はそれほど円高じゃないってことです。なのにそう感じるのは、産業の競争力が弱まったせいです。
官僚は「国のため」より自分たちの影響力の最大化を優先する
川嶋 日本経済がなかなかいい方向に進まないのは、官僚が足を引っ張っているという部分もあるのでは?