エコノミスト・カンファレンス「ジャパン・サミット2011」リポート、第6回目の今日は「モデル都市: 未来の都市は日本から?」をテーマに行われた議論をお届けする。

 パネリストはトヨタ自動車技監の渡邉浩之氏、都市計画家でまちづくりカンパニー・シープネットワーク代表取締役の西郷真理子氏、日本GE社長のマーク・ノーボン氏。司会はザ・エコノミスト・グループコーポレートネットワーク日本 ディレクターのダン・スレーター氏。

情報通信端末、自律分散型エネルギー源へと進化した自動車

(写真提供: エコノミスト・カンファレンス、以下同)

司会 まず、それぞれの方に、最近の取り組みについてご紹介いただきましょう。

渡邉 私はトヨタで技術の仕事をしているほか、民間企業で組織するNPO法人ITSジャパンの会長を務めています。ITSジャパンは情報通信技術を使って、車の安全やCO2削減、渋滞の解消を目指す団体です。

 2011年1月から、ホンダ、パイオニア、トヨタ、日産自動車の情報をすべて集める社会実験を実施しているまっただ中に、東日本大震災が発生しました。

 各社の車の走行情報を集めて軌道を重ね合わせていくと、どんな山奥であっても24時間以内に車が走った道を特定できる。つまり、走行可能な道が一目瞭然で見ることができる。これをインターネット上に公開したことで、国の救援活動、被災者の避難のお役に立てたと思います。

 最近の車は大きなバッテリーを搭載していて発電機能もあるので、携帯電話の充電や炊飯など、生活のサポートをすることができます。本来は移動手段であった車が、情報通信端末として、自律分散型のエネルギー源としても活用できる。こうした機能をうまく活用することで、車に新たな価値が生まれます。

 車から集めた情報を加工して、カーナビなどのメディアに渋滞情報を流したり、災害時には緊急情報を住民やドライバーに流すことができます。行政をデジタル化したうえで標準化すれば、広域連携も可能になるはずです。

西郷 私は日本の地方都市で住民と一緒に町づくりに取り組んでいます。

 日本は世界に類を見ないほどの人口減少と高齢化が、これから始まります。現在の1億2700万人が2050年には9500万人で高齢化率40%、2100年には人口が5000万人を切るとの推計値を政府が出しています。

 そうした中で、日本の町が持続可能に生き続けるためには、住み続ける人が自分たちの力で町を維持することが大切です。 

 日本には都市の中にコミュニケーションできる「間」がたくさんあります。そういうものを生かした快適な空間を作ることが、アプローチの一つとして重要だと考えています。