毎年、新年の始業日にはなぜか旧友が会社に集う。午後から恒例の「新年会」をしているからかもしれない。
お酒も入り饒舌になると、旧友たちと自ずとシステム開発の話になる。システムは本来どのようにあるべきかという話になり、大いに盛り上がった。
議論している中で、経営者やシステム担当者に非常に参考になるだろうと思われる話があったので、ここで紹介したいと思う。
食品会社の販売業績が伸びなかった意外な原因
以下は、旧友の1人が、2011年に経験したことである。
ある食品会社で「生産販売管理」の新システムを導入しようということになった。既存システムはその会社が独自に構築したものだったが、ソフト、ハードともに耐用年数を過ぎていた。そこで、すぐさま導入委員会が発足し、新システム構築の議論がなされた。
議論の結果、短期導入が可能で、スクラッチ開発に比べて低価格なパッケージソフトを導入することが決まった。予定通り導入は短期間で済み、予算内に収まり、順調に稼働し始めた。
だが、その会社の販売業績がなぜか思うように伸びないのである。そこで、旧友にコンサルの依頼があったのだという。
彼が出した結論は、思いもよらないものであった。「業務をパッケージと予算に合わせてしまったことが、販売実績が伸びない原因だ。『食品の材料仕入れ→加工→出荷→管理』という業務をパッケージ機能に合わせたために、長年継承してきた業務自体の流れが変わってしまった。その結果、他社との差別化ができなくなり、普通の食品会社になってしまった」と言うのである。
生産販売管理をパッケージに合わせたら「強み」が消えた
それを聞いて、似たような事例を思い出した。昨年、当社の顧客が生産販売管理システムを再構築するという。10年前に当社が支援してパッケージを導入し、足りない機能はアドオンしてシステムを稼働させた。だが、やはりソフト、ハードともに古くなったので、最新の業務内容に合わせてシステムを作り替えたいという。
再構築を手がける会社としては、当然、当社が本命である。しかし、相見積もりを複数の会社から取ったところ、その中の1社が当社より2000万円安い見積もりを出し、最終的にその会社が落札してしまった。