前回は、橋下徹大阪市長率いる「大阪維新の会」の敵側からの視点で書きました。今回は逆に大阪維新の会の立場に立って、既存政党を叩く側に回ってみましょう。

 日本で時折、総選挙なら一政党が300議席を超える当選者を出すことがあります。小泉純一郎総理の時の自民党、そして現在の民主党がそうした状態にあります。こうした文句ない大勝利を得た時、勝った政党の古参幹部は最初にこう考えます。

 「次の選挙は負ける」

 理由は簡単です。何度も選挙をしているベテランほど「浮動票」の怖さを知っているからです。浮動票は、ちよっと気に入らないことがあると、すぐに他党の票に化けてしまいます。

 ベテランは、自分を多少気に入らないところがあっても支持してくれる有権者がどれくらいいるのか知っています。こうした有権者の票は「固定票」と呼ばれます。

 選挙の得票数は、「固定票+浮動票」で決まります。連続当選を続ける政治家は、一般に固定票を多く持っています。当選のボーダーライン以上の固定票を持っている候補者は、まず落選することはありません。

 しかし、そんなに多くの固定票を持つ人はめったにいないわけで、多くの政治家が浮動票の獲得に四苦八苦しています。

 多くの浮動票が容易に手に入るのは、いわゆる「風」が吹いた時です。所属する政党に有権者の注目と期待が集まった時、すなわち風が吹いた時、固定票の少なさを補ってあまりある票が取れます。総選挙で300議席も取れる政党は、固定票ではなく浮動票をつかむことで大勝します。

 しかし、風が吹かなくなれば浮動票は一気になくなり、今度は自分たちの敵の弾丸になってしまいます。だから次は負けると考えて、ベテランは次の選挙に備えるのです。

住民の支持をバックにローマ教皇も攻撃したフィレンツェの牧師

 「武装した預言者はみな勝利を収め、備えのない預言者は滅びる」

 (「君主論」池田廉訳、中公文庫)

 マキァヴェッリの青年時代のフィレンツェにも、橋下市長のような政治家がいました。ジロラモ・サヴォナローラ(1452~1498年)です。