「買い物環境に関するアンケート調査」と題した、実に興味深い調査結果が、秋田市から公表された(調査実施期間は昨年9月7~25日で、65歳以上の秋田市民1192人が回答)。なぜ、このような調査が行われたのだろうか。秋田市の発表資料には、以下のような理由の記載がある。
「高齢化の進展に伴い、移動手段が徒歩に限られ、お住まいの近隣でしか買い物ができないかたが増えています。こうした中、地域商店街の衰退や店舗の廃業などにより、食料品など日用必需品を購入することができる、地域に根ざしたお店が減少しており、今後日常の買い物に困るかたが高齢者を中心に増加することが予想されます。本市では、こうした人々を『買い物難民』と称し、問題の解決に向けた対応策を検討していきたいと考えています。そのためには、まずは現状を把握し、課題を整理する必要があることから、『買い物環境に関するアンケート』を実施しました」
高齢化の進展度合いにおいて、秋田県は日本全体の「10年先」を走っている。秋田県の経済社会動向には、日本経済の「未来図」となっている面があると考えられる(詳しくは拙著『「依存症」の日本経済』ご参照)。また、高齢化が進んでくると、交通手段や時間など、個人消費を制約する要因が着実に膨らんでくることに、注意が必要である。筆者は昨年8月25日に作成した「個人消費の未来図」で、この問題を考察。「人口減・少子高齢化が着実に進行する中での消費の『未来図』は、『時間』というコストの存在も含めて考えてみると、売り手にとっても買い手にとっても、明るいものにはなりにくい」と主張した。
そして、今回のアンケート調査結果は、筆者の主張をしっかり裏付けるものとなった。すでに発生している「買い物難民」の厳しい実情の一部を、以下でご紹介したい。高齢者となり、しかも体力が顕著に低下した場合、買い物をするのがいかに大変な重労働となり得るかが、十分すぎるほど理解されるだろう(特に高齢単身世帯のケース)。
【買い物の際に困っていること】(2つまで選択し回答)
「特になし」(44.4%)
「徒歩圏内に行きたいお店がない」(33.5%)
「家族の協力がないと行きたい時に買い物ができない」(23.6%)
「重い物が持てないため一度に少量しか購入できない」(20.2%)
「車や自転車の運転がしんどくなってきた」(9.6%)
「車がない」(8.8%)
「買い物を手伝ってくれる家族等がいない」(7.3%)
「その他」(5.4%)
「バス・鉄道の乗降が体力的にきつい」(2.8%)