過去2回に渡って米企業が勇躍し続ける実像を、「コーポレートランドの衝撃」として報告した。多くの方から反響を頂いたので、3回目(最終回)も米企業の脱税のトリックを解き明かしてみたい。
前回、電気・金融大手ゼネラル・エレクトリック(GE)が2010年度、140億ドル(約1兆円)の利益がありながら、米政府に法人税を全く納付しなかったり、グーグルが31億ドル(約2350億ドル)もの税金逃れをしていたカラクリ、ダッチ・サンドイッチ(前回参照)という手法を述べた。
今回は日本のメディアではほとんど報道されていない「逆モリス・トラスト」という別種の手口を記したい。多少マニアックになるが、米国の多国籍企業(コーポレートランド)がいかにして法人税を逃れているかを指摘することはメディアの役割だと考える。
節税に血道上げる世界最大の消費財メーカー
ただ脱税と書くと違法行為と受け取られるかと思う。厳密には法律の網の目をくぐり抜けた巧みな経理上の戦術であり、刑事罰には当たらないので脱税とせず、単にトリックと記すことにする。
前置きが長くなった。例を挙げて、かみ砕いて説明したい。ここで取り上げるのはまたしても大手である。世界最大の消費財メーカー、プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)だ。
オハイオ州に本社を置く同社は2010年度の売り上げが789億ドル(約6兆円)で、紙オムツからポテトチップスまで製造する巨大なコーポレートランドである。
2008年のことだ。同社コーヒー事業のフォルジャーズの業績が低迷していたことから、経営陣は事業を切り離す決断をする。
他社に買収話を持ちかけて売却すれば、一時的にキャッシュフローは増えるが、売却益の納税義務が生じる。だがP&Gはそれを逃れるのだ。
フォルジャーズは1850年にサンフランシスコで創業されたコーヒー会社だったが63年、P&Gがコーヒー事業を拡大するために買収。