JBpressは武村正義元蔵相に単独インタビューを行い、小沢一郎民主党幹事長や鳩山由紀夫首相をめぐる「政治とカネ」の問題などについて聞いた。過去には力を合わせて細川政権を樹立した小沢氏に対し、武村氏は「きっぱり辞めた方がいい」と述べ、政界引退を「勧告」した。小沢氏が居座り続ければ、民主党内の「反小沢」議員の反乱を招き、党が分裂すると警告も発している。
自民党を飛び出し、新党さきがけを結成したかつての「盟友」である鳩山首相についても「言葉で巧みに切り抜けようとしている」と批判。米軍普天間飛行場の移設問題が期限の2010年5月までに決着しなければ、首相の進退問題は避けられないとの見解を示した。(2010年2月9日取材、前田せいめい撮影)
JBpress 「政治主導」を掲げた鳩山政権の発足から5カ月間をどう評価するか。
1934年滋賀生まれ 東大経卒 自治省を経て八日市市長、滋賀県知事 衆院議員 自民党離党後、新党さきがけ結成 官房長官(細川内閣)、蔵相(村山内閣)
武村正義氏 「政治主導」というスローガンはよいのだが、目新しいことではない。自民党政権や細川政権なども政治主導を実行した。うまくいったり、いかなかったりの両方極端なことを私は経験してきた。
自民党時代、金丸信(元副総理)さんの訪朝団に私は事務局長として同行した。北朝鮮といろいろやり取りを行い、最後に戦前はともかく、戦後の不正常な期間についても償うという声明に当時の自民党と社会党の代表が署名した。
まさに政治主導の外交だったが、国際法の常識に照らすと全く間違いなことを決めて帰国した。関わっていた一人として、ほろ苦く思い起こす。政治主導が失敗した最たる例であり、外交を政治主導にしたら、どんどん失敗を犯してしまう。
もっと大きな問題はこの国の財政であり、突き詰めるとこれも政治主導(が引き起こした)。官僚、中でも財務省は常に均衡主義だから、歳入・歳出のバランスを取ろうとする。一方、政治は増税を嫌い、出す方は大盤振る舞い。862兆円(=国と地方の長期債務残高)という借金を積み上げてしまった。これこそが、政治主導の結果である。
平たく言えば、政治家は素人だが、対する官僚はプロ、専門職である。政治家は広く薄く何にでも関わるが、特定の分野にスペシャライズできない。
急に大臣や副大臣になり、官僚に「おい!」「こら!」と命令しても間違うことが多い。素人の政治家が途端に胸張って官僚に指図しているが、心配してしまう。「最後は政治が判断する」という意味は、責任を負うということ。その過程では、官僚や学者、民間人から幅広く意見を聴かなくてはならない。
普天間移設問題、5月決着しなければ鳩山首相退陣も
━━ 米軍普天間飛行場の移設問題は鳩山首相が政治決断できず、難航を極めているが。
武村氏 自公政権の下で紆余曲折を経て(沖縄県名護市)辺野古(への移設)で意見集約されていたものを、新政権が「ご破算で願いましては」と仕切り直して県外あるいは国外移転を言い出した。ようやくまとまったものをご破算にするのは、凄まじく拙い政治である。この問題を見ていると、「民主党は幼い」と思わざるを得ない。
米軍基地は「超迷惑施設」であり、どこへ行っても嫌われる。しかし日本の安全保障のためには、どこかに決めなくてはならない。それでも当てがあって鳩山首相が(辺野古以外への移設を)言っているならよいが、私の知る限りそれはない。岡田克也外相や北沢俊美防衛相は当てがないのを知っているから、最近はギブアップのようだ。