昨年の暮れ、お正月用にと、お気に入りのハムを買いに出かけた。

店に入りきれない人たちが作る長い列

 向かった先は静岡県御殿場市。東京から東名高速に乗って約1時間。御殿場インターからほど近い住宅地の中に、唐突に現れるのが、手作りでハムやソーセージを作っている「二の岡フーヅ」だ。

 看板がなければ、普通の「大きな旧家」としか思えない建物と、同じ敷地内にある間口の小さい店である。ところが、この店には週末ともなれば、近県や首都圏ナンバーの車が大挙して押し寄せる。

 私が行った日も店に入りきらない人たちが長い列を作っていた。とりたてて宣伝などしていないが、口コミで増えた根強いファンにしっかり支持されている特別な店なのだ。

スーパーではお目にかかれない手作りの味と形

 私が「二の岡フーヅ」のハムに出合ったのはもう20年以上も前のこと。友人からお土産に「ロースハム」をもらったのがきっかけだ。

 ブロックのまま、しっかりタコ糸でしばられたロースハムは、スーパーで売られているそれよりもちょっぴり不恰好だったが、それがまた「手作り感」を醸し出していた。

お店の看板

 ハムというと、薄くスライスしてそのまま食べるか、ハムエッグか・・・ぐらいしか当時の私は思いつかなかったが、友人の勧めもあって、分厚く切ってハムステーキにしてみた。焼いている時からスモークの香りがひときわ高いのに驚き、食べてみて、しっかりした肉質に感激した。

 脇役ではなく、ちゃんとメーンになれるハム。それがこのロースハムに出合った時の印象だった。その時以来、私が「二の岡フーヅファン」の仲間入りをしたのは言うまでもない。

 二の岡フーヅは、同社ホームページによると、戦前に御殿場にできた「アメリカ村」での養豚組合が前身だという。富士山の裾野に広がる御殿場市は真夏でも涼しく、箱根や軽井沢と並ぶ避暑地として、有名人や外国人の別荘が次々と建った時期があり、これが通称「アメリカ村」と呼ばれる別荘地に発展していった。