電子機器・部品の市場に詳しい米国の調査会社IHSアイサプライは、米アマゾン・ドットコムが9月28日に発表したタブレット端末「キンドル・ファイア(Kindle Fire)」について、製造原価が209.63ドルになるとする分析結果を公表した。

コンテンツを販売しても10ドル程度の薄利ビジネス

ライバルひしめくタブレット市場、各製品の特徴は?

アマゾンのタブレット端末「キンドル・ファイア」〔AFPBB News

 キンドル・ファイアは、アマゾンが満を持して市場投入するマルチタッチカラーディスプレイ搭載のタブレット端末。メディアの事前報道通り、ディスプレイのサイズは7インチだが、価格は伝えられていた250ドルよりも安い199ドル。

 米アップル製「アイパッド(iPad)」の廉価モデル(499ドル)の半値以下と圧倒的な価格競争力を持つのだが、IHSアイサプライの分析によるとアマゾンは端末が1台売れるごとに10ドルの損失を出すことになる。

 しかもこれはあくまでも部品原価と製造コストを合わせた金額で、これに販売費用などを含めるとコストはさらに膨らむことになる。

 アマゾンはこの端末を介して、電子書籍や映画などのデジタルコンテンツを販売するが、そうした売り上げを考慮したとしてもアマゾンの利益はキンドル・ファイア1台につき10ドル程度で、極端に薄利のビジネスモデルだとIHSアイサプライは指摘している。

 アマゾンは製品を普及させるためなら赤字覚悟で値下げを敢行する企業として知られるが、今回も同様の戦略に出たようだ。現在アマゾンのウェブサイトに掲載されているジェフ・ベゾス最高経営責任者(CEO)の顧客宛ての手紙には次のようにあり、同氏の意気込みが伝わってくる。

 「世の中には2種類の企業がある。1つは顧客の支払金額をより多くしようと熱心になる企業、もう1つはより少なくしようとする企業。どちらのアプローチも機能する。我々は断固として後者を選ぶ ~中略~ 我々はプレミアム製品を非プレミアム価格で作っている」

 前者の企業とはアップルのことを指していることは容易に想像できるが、IHSアイサプライの製品分解分析サービス部門アナリストのアンドリュー・ラスウェイラー氏は、アマゾンがキンドル・ファイアでこうした挑戦的な価格設定ができるのは、同社にネット小売事業があるからだと指摘している。