前回、旗幟を明確にして、中立を選ぶなと申し上げました。旗幟を明確にすれば、勝っても負けても味方は恩を感じてくれるからです。しかしマキァヴェッリは、やむなき場合を除き、自分が一番強い立場にいて旗幟を明確にすることを勧めます。
<君主は、やむおえない場合のほか、自分より強力な者と組んで、第三者に攻撃を仕掛けないことだ。> (「君主論」池田廉訳 中公文庫)
理由は簡単で、味方として信頼はできても、彼らの虜囚となってしまう可能性があるからです。
明らかに力の差がある場合は、一般に主導権は強い方にあります。何か事をなそうとしても、味方の意向を尊重せざるを得ません。強い味方がノーと言えば、従わざるを得なくなるわけです。
逆に自分が強ければ、自分の意向を相手に飲ませることができます。この連載でもいずれ触れることになりますが、君主は人の意向によって意思決定が左右されてはいけないのです。
前回挙げた公明党のように、公明票が自民党の候補者の当選を左右するような、強者の一番痛いところを押さえているならいいのです。しかし、そんなおいしい状況に、弱い側がいられることはそう多くありません。
さらに言えば、いくら味方でも、いつでも敵に回れることも挙げておくべきでしょう。典型例は、マイクロソフトのOSを搭載せざるを得ないパソコンメーカーです。OSという一番大事なところを押さえられていますから、マイクロソフトの意向に逆らうことはかなりの勇気がいることになります。
アップルはなぜグーグルではなく端末メーカーを訴えるのか
スマートフォンの世界で現在最も大きな話題は、アップルが台湾HTC、韓国サムスン電子などを訴えている特許戦争でしょう。どっちが勝つのかは全く読めませんが、1つだけ確実に言えることがあります。アップルの「対アンドロイド(Android)攻撃」は、笑っちゃうほどにマキャヴェッリの言う通りに進められていることです。