前回のコラムで「スズキという企業が『元気に生きて行く』ためにはフォルクスワーゲン(VW)との提携から得られるものが欠かせない」と書いた。両者の関係悪化をメディアが話題にするようになった状況で、「良い関係を維持していってほしい」という応援メッセージとしての意味を込めたのだが。

 しかしご承知のとおり、9月12日にスズキ側が提携の解消を発表した。そのプレスリリースから、「業務提携及び相互資本関係の解消の理由」という項目の文面をそのまま引用する。一部を選んで紹介し、そこに解説を加えるという新聞記事のようなやり方では、誤解を招くこともありうると思うので。

 <当社は、フォルクスワーゲンAGの申し入れを受けて、互いに独立したイコールパートナーとして提携するために包括契約を締結しました。当社としての提携の最大の目的は、世界の自動車市場において技術開発競争が激化しているため、当社の環境技術などの開発を加速するよう技術情報の提供などの技術支援をフォルクスワーゲンAGから受けることにありました。こうした協力関係を確実にするため、株式の相互保有について両社で合意しました。

 しかしながら、当社の議決権総数の19.89%というマイナーな出資比率では、フォルクスワーゲンAGが100%近い議決権を有するフォルクスワーゲン・グループ会社と同等又はそれ以上の技術的支援をフォルクスワーゲンAGから受けることが困難であるということを当社として判断せざるを得ない状況となりました。当社は、本年はじめからは、環境技術等も開発を加速させているところです。

 当社としては、国内の軽自動車市場やインドをはじめとするアジア市場において競争力を維持していくためには、経営判断における『自主独立』は不可欠なものと考えていますが、フォルクスワーゲンAGは、当社を『財務的、経営方針上、重大な影響を与えることができる』会社として公表しています。

 総合的に考えて、業務提携をした当社の目的の達成が困難な状況であること及びスズキの自主的な経営判断にマイナスの影響を与えられることが懸念されることから、フォルクスワーゲンAGとの業務提携及び相互資本関係を解消することを取締役会で正式に決定しました。>

 これはもちろん、ごく表面的な状況説明である。

 どうやらスズキが直面した問題は、「VWはこちらをセアト(スペイン)やシュコダ(チェコ)と同じくグループの中でVWに従属する企業のように扱い」「我々にとって必要になる(と思われる)技術要素を供与しようという態度を見せず」「次の世代に向けて世界の自動車技術の先頭に立つべく研究開発の内容を開示してくれない」といったことのようだ。