日本ビジネスプレスは2009年11月11日、経済メディアサイト「JBpress」の開設1周年を記念し、特別セミナーを開催。大和総研の武藤敏郎理事長(前日銀副総裁、元財務事務次官)が「2010年景気展望―日本経済はどこへ向かうのか」と題して講演した。

武藤敏郎氏/前田せいめい撮影武藤敏郎氏(むとう・としろう)大和総研理事長 1966年東大法学部卒業、大蔵省入省。主計局次長、官房長を経て大蔵事務次官(省庁再編に伴い財務事務次官)。2003年日銀副総裁、08年から現職。

 武藤氏は「われわれの経験では一度巨額の財政出動を行うと、単年度で終わることはない。何度かやらないと政策的にもたない。2010年前半の日本のGDPは四半期ベースでマイナスになる可能性も否定できない」と懸念を示した。物価に関しても、「需給ギャップがどれぐらい続くかがポイントになる。2010~11年、さらに先までCPI(消費者物価指数)のマイナスが続くかもしれない」と述べ、デフレ長期化のリスクを指摘した。

 鳩山由紀夫政権の政策運営全般に対しては、「政権交代というのは100日間のハネムーンだから、温かい目で見る必要がある」と理解を示した。その一方で、早期にマクロの成長戦略を策定し、膨張する財政赤字への対応を含めて総合的な政策を示すよう提言している。以下、講演と質疑応答の要旨を掲載する。(編集協力=JBpress副編集長・貝田尚重、撮影=前田せいめい)

リーマン・ショック前、「バブル論」否定していた米FRB

 世界経済は2008年9月に起こったリーマン・ショックによって急転したかのように語られている。しかし、四半期ごとの成長率を見ると実は、リーマン・ショック以前から世界経済はマイナス成長に入っていた。米国のサブプライムローン問題に端を発するグローバル金融危機は、2007年8月の仏BNPパリバ・ショックによって顕在化したと言ってよい。

 それから遡ること1年前の2006年半ば頃、米国の住宅価格が下落を始めていた。2000年以降の米住宅市況は毎年、10~20%近い上昇が続いていたのだが。