経営再建中の御園座が、歌舞伎公演を行う劇場である御園座会館(名古屋市中区)の建て替えを含む再開発協議の開始を発表した。

 同社は2011年3月期決算で純損失5億9500万円となり5期連続の赤字。2010年10月から2011年9月末までの期間、長期借入金について主力取引行への返済猶予も受けている。

 厳しい状況の中、今回、再開発の方針を示した同会館は1963年に完工。築50年弱という年月が経過しており、現代の耐震基準から見ると問題が少なくない。ビル自体の設備ももちろんだが、完工当初は日本一といわれた肝心要の劇場施設そのものも老朽化が進み、数年前から建て替えが急務とも言われ続けてきた。

 長く名古屋の劇場文化を支えてきた御園座。設立115年を誇り、名古屋の富裕層や地元の老舗企業からの厚い支えもある。また過去2度にわたる劇場焼失という重大事も乗り越えてきた。

 ただ、再開発の発表文章は「当社は、当社事業の再建を推し進める中で当社の本社および劇場の所在地である御園座会館の再開発に関する本格的な協議を開始しましたのでお知らせします。再開発計画の具体的な内容については、確定次第、別途公表致します」と短く、具体的な内容には触れていない。ゆれる老舗の行方に注目が集まっている。経緯や周辺事情を探った。

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 御園座会館の周辺には、観劇客をあてにした飲食や物販店舗が多く集まる。長年、相思相愛の関係を築いてきただけに、建て替えに対する関心は高い。ただ、発表内容そのものに「建て替え」「補強」などの具体案がないため、期待と困惑が入り乱れている。

 「当面、静観ですね。御園座会館は5、6年前に大規模な改装をしており、建物の古さは感じない」と語るのは、地元の商店街関係者。「ただ建て替えということになれば、いまの閉塞状態の打開にもつながる」と建て替えに対しての期待感も見せる。