国内生産の再編を打ち出したトヨタグループは、車種ごとの専門メーカー集団へと移行する。それぞれの専門メーカーが企画・開発から生産まで一気通貫の車づくりができる体制を整え、コスト削減や車両開発を強化する。

 トヨタ1社であらゆる車種を開発するのは「難しくなっている」(トヨタ首脳)。トヨタグループ内に車種別の専門メーカーを複数つくり上げることで、各社の役割や責任を明確化し、競わせる。結果、グループ全体の競争力を高める。円高が進むなか、「国内生産300万台」を死守する考えだ。

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 トヨタ車体や関東自動車工業はこれまで、ボデーは自社で開発してきたが、足回り部分などはトヨタが開発してきた。企画・開発や調達などの根幹となる権限はトヨタ本体にあり、あくまでトヨタの「一工場」でしかなかった。受託メーカーという意識に甘え、個々の主体性は次第に失われつつあった。

 トヨタは今回の両社の完全子会社化で、車体メーカーに対し完成車メーカーへの自立を促している。トヨタは専門メーカーに権限を委譲し、トヨタ車体をミニバン・商用車、統合新会社を小型車の専門メーカーとして事実上の独立採算制へと移行させる方針。専門メーカー自らが知恵をしぼって、安くて売れる車をつくるシナリオだ。

 トヨタグループは、ダイハツ工業を軽自動車、日野自動車をトラック・商用車の専門メーカーと位置づけている。ダイハツは自らの頭と腕をフル回転し、70万円台の国内向け新型軽自動車を今秋販売する。業界では「国内メーカーで最も競争力があるのはダイハツ」との見方が多い。

 今回の完全子会社化は、第2、第3のダイハツを生み出すための一手。円高耐久力を極限まで高めなければ、国内生産はもはや成り立たない。トヨタはグループの総力を結集、再構築して円高対策に臨む構えだ。