11日の東京外為市場で、ドル/円相場が91円割れの円高ドル安水準になった。すでに慢性的なデフレ状況にあると筆者がみている日本経済に対し、物価の下落圧力をさらに強める要因が、追加的に出てきた形である。
今般の為替相場の変動は、為替相場全体としてみた場合、あくまで「ドル安」局面であって、「円高」局面ではない。これまでドルに逃避していたマネーが、米国株の堅調推移を背景に、ユーロや豪ドルなどの相対的に金利の高い通貨へとシフトする、リスクテイクの動きを強めていることが、その背景にある。
従来は、ドルと円はともに「逃避通貨」という位置付けであることから、米国株の上昇場面ではドルとともに円も売られていた。だが、今回は動きが異なっており、円に対してもドルが売り込まれている。3カ月物LIBORでみた場合に日米短期金利が逆転した状態が続いていることも、ある程度影響しているのだろう(9月11日のLIBOR3カ月物は、ドルが0.29900%、円が0.35938%)。
さらに、日本の通貨当局が政権交代後も円売り介入にはきわめて動きにくいと考えられることも(9月4日「鳩山次期政権vs円高 円売り介入が実現する可能性は?」参照)、対ドルで円を買い進めやすくしている1つの要素と言えそうである。
円高ドル安が一段と進行してくると、単なるデフレではなく、デフレスパイラルの懸念が強まらざるを得ない。では、日銀はデフレスパイラルのリスクについて、どのように考えているのだろうか。この問題は「第2の柱」で点検されるリスクということになるが、日銀政策委員会メンバーから最近出てきたデフレスパイラルに関する発言を集めてみると、以下のようになる(下線は筆者)。
◆山口廣秀日銀副総裁 函館市金融経済懇談会における挨拶(7月22日)
「日本銀行としては、そうした状況においても、『物価の下落が、デフレスパイラルにつながらないようにすることが何よりも大事である』と考えているということです。デフレスパイラルとは、物価下落が景気を悪化させ、そうした景気の悪化が更なる物価下落をもたらす悪循環のことです。先ほど申し上げた通り、日本銀行では、中心的な見通しとして、物価のマイナス幅は一旦拡大するものの、本年度後半以降は、景気の持ち直しに伴い、物価のマイナス幅も縮小していく姿を想定しています。従って、 現時点では、わが国経済がデフレスパイラルに陥り、物価安定の状態からどんどん離れていってしまう可能性は低いと考えています」
◆野田忠男日銀審議委員 長野県金融経済懇談会における挨拶(7月30日)
「物価の先行きを考える上で私が注視しているのは、経済全体の需給バランスの悪化が、物価形成のダイナミクスにどの程度の影響を与えるかという点です。現時点では、これまで比較的しっかりとアンカーされていた中長期的なインフレ予想が、トレンドから大きく乖離し、物価下落と景気悪化の悪循環――所謂、デフレスパイラル――が発生するリスクが高まっているとはみておりませんが、いずれにせよ物価関連データを注意深く点検していきたいと考えています」
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