この国の「形」をどう創り直すか。
それこそが問われるべきなのに、天下分け目の総選挙は政党間のバラマキ合戦と化した。民主党が300議席を超える大勝を収めて政権交代が目前に迫ったのに、オバマ政権誕生時の米国のような高揚感はない。
「2人の老人が口げんかしているような印象」――。麻生太郎首相・自民党総裁に鳩山由紀夫民主党代表が挑んだ真夏の選挙戦を、英誌エコノミストはこう報じた。さらに「鳩山氏と麻生氏は互いを攻撃するより、小泉(純一郎)氏の遺産である自由市場改革を批判することに熱中しているように見える」と伝え、実は自民、民主両党が競い合うというより小泉改革を「共通の敵」とする今回の選挙の本質を指摘していた。
英紙フィナンシャル・タイムズは社説で「日本は大再編を必要としている」と論じ、具体的な課題として(1)経済の再活性化 (2)高齢化への対応 (3)女性の能力の活用 (4)中国が台頭する中での外交政策――を挙げた。「民主党の鳩山由紀夫氏は全ての答えを持っているのか? 実のところ、ノーである」「外交政策では特に迷走し、米国政府を不安にさせた。経済面では財源がどこから来るのか説得力のある説明を示さないまま、多額の支出を公約している」と論調は手厳しい。
米誌ニューズウィークも民主党の経済政策に大きな疑問符を付けた。「驚いたことに、民主党は自民党に攻撃されるまでマニフェスト(政権公約)に『経済成長戦略』を明記していなかった。民主党は日本の窮状を十分に理解していないようだ。経済成長なくして快適な生活水準を維持するのは不可能である」(日本語版2009年9月2日号)
4年は続く民主政権? 出直し自民は党名変更も
欧米のメディアから、御託宣をいただくまでもない。日本の有権者の多くは民主党のマニフェストの曖昧さを見抜き、不安も抱いていたはず。それでも今回は「自民党にだけは投票したくない」「政権の座から引きずり下ろしたい」との思いから、投票所に足を運んだのではないか。要は、自民党が自滅しただけのことだ。
「大物」事務次官と称された霞が関の元高官に政界の展望を聞いた。すると、民主党のポピュリズム的な政策を批判する一方で、「(今回当選した衆院議員が任期中の)4年間は民主党政権が続くだろう」との予測を示した。
「自民党は解党的出直しを迫られ、党名変更さえ浮上するかもしれない。2010年の参院選に自民党の再建は間に合わず、民主党が参院でも単独過半数を制する可能性が高い」というわけだ。
この元高官が「リーダーの器ではない」と酷評する麻生総裁を降ろすこともできず、自民党は選挙戦に突入。案の定、玉砕してしまった。
高度成長期の少品種・大量生産モデルは「右肩上がり」経済を前提とし、マニュアル通りに作業をこなす人材を必要とした。このため、教育システムもそれを目標に据えた。しかし低成長時代を迎えてこのモデルの「賞味期限」が切れると、日本国内には対応不能の組織が目立つようになった。