前回に引き続き、今回も夏のアルザスの旅のリポートをお届けする。

 超高速鉄道TGVが通ったことで、中心都市のストラスブールまでパリから2時間半という便利さもあって、このところ、アルザス地方まで足を延ばす旅行者は確実に多くなった。

 特にクリスマスの時期、この地方では、「マルシェ・ド・ノエル」といって、日本のいわゆる屋台のようなもの、それも木造りの山小屋風のおしゃれなスタンドが市街の中心地にずらりと並ぶクリスマス市が有名だ。

アルザス地方のワイン街道

 一つひとつの小屋はそれぞれ、様々な手工芸品や食料品、お菓子、クリスマスのオーナメントなどを販売するスタンドになっている。人々は、甘く味つけしたホットワインを片手にそれらを巡って楽しむ。寒いアルザスの冬ではあるけれども、この時期が一大観光シーズンであり、「マルシェ・ド・ノエル」見物のための観光バスがフランス各地はもとより、隣国からも連日やって来る。

ワイン街道の風景

 その様子はいずれかの機会にリポートするとして、今回は夏のアルザスの魅力が最も堪能できるワイン街道の村々を巡る。北はストラスブールの近郊から始まるワイン街道は、南北に170キロほどの距離にわたって細長く続いている。

 東向きの斜面を櫛でとかしたような細い筋の模様を描きながら緑に染め上げているのは、一面のブドウ畑。手のひらほどの大きさに成長した無数の葉が太陽の恵みを一身に受け止めている。

アルザス名物「タルトフランベ」
一年中がクリスマスの店のウインドー

 アルザスのワインは、そのほとんどが白。

 「すっきりとした味わいと上品な香りが身上のリースリングは、魚料理や和食などとも相性が良く、果実あるいはバラの香りとも形容されるアロマがセンセーショナルなゲヴュルツトラミネールは、やはりアルザス特産のフォアグラやチーズとともに」

 など、名物ワイン自慢をしだしたら、この地もまたフランスのほかの土地に全く引けをとらない豊富さを誇る。

 作られる物が素晴らしい場所というのは、風土もまた美しく、傾斜地に点在するたくさんの村々はいずれも、まるでおとぎ話の風景かと思えるようなたたずまいで、旅人たちを迎え入れてくれる。

 アルザス版のピザと言えそうな「タルトフランベ」がことに美味しいというレストランのある村、キンツァイム。

 世界の名品に数えられるほどの高いクオリティのコットンプリントのテーブルクロスを求めに、世界中からお客さんがやって来るというリボーヴィレ。

 1年を通じて、クリスマスグッズを扱っていることで有名な店のあるリックヴィル。11世紀のカトリックの法王の出生地であるエギサイムなどなど。