2009年8月30日の総選挙に向け、自民、民主両党のマニフェスト(政権公約)が出揃った。政権交代のかかる天下分け目の決戦だけに、両党ともマニフェスト策定に全力を挙げた。しかし内容を見ると、生活不安を強める有権者を意識するあまり、耳に響きの良いバラマキ政策が目立つ。

 未曽有の少子高齢社会を迎え、没落モードに入りかねない「経済大国」をどう再設計するのか。そういう意味では、両党のマニフェストの内容は満足すべき水準に及ばない。そして選挙の対決姿勢とは裏腹に、政策面では似通い始めた。小選挙区・2大政党制に内在する欠陥が表れているのかもしれない。

 民主党が2009年7月27日発表したマニフェストは、「政権交代。」「国民の生活が第一。」をキャッチフレーズとした。年間31.2万円の子ども手当、公立高校の実質無償化、農家の戸別所得補償、ガソリン税暫定税率の廃止、高速道路の無料化・・・。「生活支援」を大義名分に、財政出動策がズラリと並ぶ。

 こうした政策に必要な所要額を個別に明示し、その合計が16.8兆円(2013年度)に上るとの試算を公表した点は評価されてよい。しかし、それをどうやって手当てするのだろうか。消費税増税には触れていない。早速、自民党は「財源が無責任で極めて曖昧だ」(麻生太郎首相)と糾弾、財源問題に民主党攻撃の照準を合わせた。

 これに対し、民主党の鳩山由紀夫代表は消費税増税に関する従来方針をあっさり修正した。これまで「4年間は議論の必要もない」と明言していたのに、7月27日の記者会見では「(消費税を財源に回す)将来の年金の議論などは当然行うべきだ。(発言を)訂正したい」と方針転換した。「(政権獲得後の)4年間で消費税を増税することは一切考えていない」と強調しているが、党首発言の信頼性や政権担当能力に疑問符が付きかねない。