前回からの続き。
問 がんの場合、静かな最期を迎えにくいのは、やはり抗がん剤治療の影響は大きいですか?
帯津 そうですね。ただ、最近は緩和ケアの考え方が普及してきたので、昔のように「これでもか」というような抗がん剤治療はしないところが多いです。
10年くらい前まではひどかった。徹底的に抗がん剤治療をすると、多臓器不全になるわけです。肝臓、腎臓、肺、心臓、全部ダメージを受ける。顔色がどす黒くなって、体も心も悲鳴を上げるんです。それに比べると、ホリスティックな優しい治療をしていると、表情までも優しくなります。
「元気になって死んでいく」
問 五木寛之先生との対談集『生きる勇気 死ぬ元気』の中に出てくる「元気になって死んでいく」という表現はすごいなあと思いました。
同じような話で、チベットで医者をしている大工原彌太郎さんという開業医が書かれた本『明るいチベット医学』(情報センター)を読んだことがあるのですが、その中に「ジュクジュクと病んだままで、死ぬのでもない、生きるのでもないという状態は、体のエネルギーが足りない場合が多い。死ぬエネルギーもない。そういう場合は、熱が出てくるものを飲ませたり、呼吸法を教えたりすると、その人は元気になって、張り切って死に向かっていきます」(要旨)というようなことが書かれていて、衝撃を受けたことがあります。
帯津 大工原さんとは会ったことがあるんです。本当に面白い方ですね。人間、やはり死に際は大事にしたいと思います。「生を充実させれば、死はどうだっていいじゃないか。苦しむんだったら苦しんだっていい」という人も中にはいますが、医者として患者さんの死と向かい合っていると、死に際はやはり大事にしたいと思うんです。
映画に例えるのは不謹慎かもしれませんが、ラストシーンがいいと映画全体が良くなる。せっかく生を充実させてきたのならば、何かこう「自分の人生の中でやるべき仕事はある程度できた」と満足して逝ってもらいたいと思うんです。
問 最期をよくするために大事なことは何でしょうか?
帯津 やはり、日頃の養生です。
問 一般的に言われる養生とは異なるものですね?
帯津 ええ、病後の回復を早めるための工夫とか、日常生活に気をつけて病気にならないようにする、という、従来の消極的な養生とは違います。私が言う養生とは、命のエネルギーを日々高め続けることです。
食事も何となく乱暴に食べるのではなく、どういうものが命のエネルギーを高めるのか考えて食べたり、心も常に自分の一生というか死生観というものを形づくっていく。さらに気功など体を動かすこと、呼吸法なども重要で、そういうことを全部ミックスして自分に取り入れて、エネルギーを高めていくことが大事だと思いますね。(※詳しいことは著書『ホリスティック養生訓』(春秋社)などに詳しく掲載されている)
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