日銀短観6月調査の業種別計数・調査全容が、2日公表された。

 筆者が常に関心を強く抱いているのは、日本経済が人口動態ゆえに国内需要の継続的な「地盤沈下」に苦しみ、慢性的なデフレ状況にあるという、厳しい現実である。そのことに関連したDIとして、まず、消費者と直接対面するポジションにある、消費に関連する3業種(「小売」「対個人サービス」「飲食店・宿泊」)について、販売価格判断DIと、国内での製商品・サービス需給判断DIを見ておきたい。

(1)消費関連3業種:販売価格判断DI(「上昇」-「下落」)

大企業 :
 「小売」             ▲37(前回調査比8ポイント低下)、9月予測▲30
 「対個人サービス」 ▲23(前回調査比5ポイント低下)、9月予測▲16
 「飲食店・宿泊」   ▲26(前回調査比8ポイント低下)、9月予測▲22
中小企業:
 「小売」             ▲16(前回調査比9ポイント上昇)、9月予測▲15
 「対個人サービス」 ▲29(前回調査比1ポイント低下)、9月予測▲30
 「飲食店・宿泊」   ▲32(前回調査比8ポイント低下)、9月予測▲29

 販売価格判断DIは、中小企業「小売」以外の5つで、今回低下した。特に「飲食店・宿泊」のDIが大企業、中小企業ともに前回調査から8ポイントも低下したことが印象的である。

 消費者の支出手控え傾向が強まる中で、宿泊業では、都市圏の大規模ホテルを含め、稼働率の低下が問題になっている。

 また、飲食店については、日本フードサービス協会が発表している外食売上高を見ると、「ファストフード」以外の業態は売上高が軒並み落ち込んでいることが分かる。直近5月分の統計で、「ディナーレストラン」は13カ月連続、「喫茶」は7カ月連続、「ファミリーレストラン」は6カ月連続で前年同月比マイナスとなっている(全店ベース。なお、現在は既存店ベースの公表が停止され、全店ベースのみ公表という扱いに変更されている)。

 このあと(2)の国内での製商品・サービス需給判断DIで見るように、もともと供給過剰・需要減退というバランスにあるところで、景気が急速に悪化し、消費者の支出手控え傾向が「食」の分野も含めて、「聖域」なく一段と進むことになった。すると、消費者を引きつけるための策として、低価格メニューの提供という動きが飲食業界の中のいずれかの社から出てきて、他社も価格競争に参入せざるを得なくなってくる。大手ファミレスチェーンの一角が88円のサラダを提供するなど、価格面のアピールを行っているのは、その一例である。