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「食のデフレ」深化

2009年07月02日(Thu) 上野 泰也

 日銀短観6月調査の業種別計数・調査全容が、2日公表された。

 筆者が常に関心を強く抱いているのは、日本経済が人口動態ゆえに国内需要の継続的な「地盤沈下」に苦しみ、慢性的なデフレ状況にあるという、厳しい現実である。そのことに関連したDIとして、まず、消費者と直接対面するポジションにある、消費に関連する3業種(「小売」「対個人サービス」「飲食店・宿泊」)について、販売価格判断DIと、国内での製商品・サービス需給判断DIを見ておきたい。

(1)消費関連3業種:販売価格判断DI(「上昇」-「下落」)

大企業 :
 「小売」             ▲37(前回調査比8ポイント低下)、9月予測▲30
 「対個人サービス」 ▲23(前回調査比5ポイント低下)、9月予測▲16
 「飲食店・宿泊」   ▲26(前回調査比8ポイント低下)、9月予測▲22
中小企業:
 「小売」             ▲16(前回調査比9ポイント上昇)、9月予測▲15
 「対個人サービス」 ▲29(前回調査比1ポイント低下)、9月予測▲30
 「飲食店・宿泊」   ▲32(前回調査比8ポイント低下)、9月予測▲29

 販売価格判断DIは、中小企業「小売」以外の5つで、今回低下した。特に「飲食店・宿泊」のDIが大企業、中小企業ともに前回調査から8ポイントも低下したことが印象的である。

 消費者の支出手控え傾向が強まる中で、宿泊業では、都市圏の大規模ホテルを含め、稼働率の低下が問題になっている。

 また、飲食店については、日本フードサービス協会が発表している外食売上高を見ると、「ファストフード」以外の業態は売上高が軒並み落ち込んでいることが分かる。直近5月分の統計で、「ディナーレストラン」は13カ月連続、「喫茶」は7カ月連続、「ファミリーレストラン」は6カ月連続で前年同月比マイナスとなっている(全店ベース。なお、現在は既存店ベースの公表が停止され、全店ベースのみ公表という扱いに変更されている)。

 このあと(2)の国内での製商品・サービス需給判断DIで見るように、もともと供給過剰・需要減退というバランスにあるところで、景気が急速に悪化し、消費者の支出手控え傾向が「食」の分野も含めて、「聖域」なく一段と進むことになった。すると、消費者を引きつけるための策として、低価格メニューの提供という動きが飲食業界の中のいずれかの社から出てきて、他社も価格競争に参入せざるを得なくなってくる。大手ファミレスチェーンの一角が88円のサラダを提供するなど、価格面のアピールを行っているのは、その一例である。

(2)消費関連3業種:国内での製商品・サービス需給判断DI(「需要超過」-「供給超過」)

大企業 :
 「小売」             ▲35(前回調査比3ポイント上昇)、9月予測▲32
 「対個人サービス」 ▲39(前回調査比1ポイント上昇)、9月予測▲38
 「飲食店・宿泊」    ▲60(前回調査比横ばい)、9月予測▲58
中小企業:
 「小売」             ▲42(前回調査比7ポイント上昇)、9月予測▲39
 「対個人サービス」 ▲47(前回調査比2ポイント低下)、9月予測▲48
 「飲食店・宿泊」    ▲61(前回調査比4ポイント低下)、9月予測▲62

 すでに触れたように、日本の景気が循環的に拡張・後退いずれの局面にあるかにかかわらず、消費関連3業種では、需給の緩みが恒常化している。国内での製商品・サービス需給判断DIは、足元で若干改善している業種はあるものの、いずれも水準は非常に大幅なマイナスである。特に「飲食店・宿泊」は、大企業、中小企業ともに▲60台に乗せている。

(3)「食料品」:販売価格判断DI(「上昇」-「下落」)

大企業 :「食料品」 ▲12(前回調査比5ポイント低下)、9月予測▲10
中小企業:「食料品」 ▲13(前回調査比10ポイント低下)、9月予測▲22

 食品メーカーの側でも、デフレ認識が強まっている。製造業に含まれている「食料品」の販売価格判断DIを見ると、大企業、中小企業ともに水面下に沈んでおり、特に中小企業では、9月予測も含め、DIは完全に下向きである。昨年6月調査にかけては、「穀物バブル」など原材料価格の上昇を足場に食品類の値上げ発表が相次ぐ中で、DIは上昇を続けていた。しかし、バブルが崩壊すると、様相は大きく変わった。

 先日、大手スーパー2社が1缶あたり100円という非常に低い値段で7月下旬から販売する第3のビールのプライベートブランド(PB)商品を、大手ビール会社が製造・供給することが明らかになった。1990年代以降で3回目となる今回の「低価格商品ブーム」は、人間が生きていくためにはまず食べなければならないという意味で、個人消費のコア中のコアである「食」の分野で、業態の垣根を越える形で、価格破壊が進行している。この点で、今回の「食のデフレ」は、過去2回よりも激しいものになっている。これが、筆者の状況認識である。

 デフレ圧力が「食」の分野を含め、一段と強まり深化していく状況では、長期金利は低下するのが自然である。