プライマリーバランスの黒字化に向け、社会保障費(医療費)を今後も年に2200億円削減し続けていくという政府の方針が明らかになりました。
5月26日、財務相の諮問機関である財政制度等審議会が、2010年度予算編成に向けてまとめる意見書の原案を公表しました。その議事要旨には次のような発言が記載されています。
「皆保険制度は世界に誇るべき制度であり、維持していく必要がある」
と認める一方で、
「医療コストの節減も必要ではないか。レセプトのオンライン化や後発医薬品の利用拡大に積極的に取り組むべき」
「医療の再生には、ただ金を積めばよいということではなく、地域の病院と診療所の連携が必要」
「国民感情からすると、医師の給料は高いと思っている人がほとんどであり、不況下で民間の給与は下がるのに診療報酬を引き上げるのは、理解できない」
といった意見が出されたようです。
要するに、「日本の医療制度は素晴らしいが、その維持のために予算を増やすつもりはない。今後も削減を続けますよ」ということです。今回の決定が医療現場の疲弊に追い討ちをかけるのは間違いないでしょう。
開業医と勤務医の格差こそが解決すべき課題?
医療費削減の続行に加えて、もう1つ決定したことがあります。
それは「開業医と勤務医の報酬格差」に関する事柄です。
「医療費の水準が問題なのではなく、配分が問題である。中でも、開業医と勤務医の格差こそが解決すべき課題である」と全会一致で合意されました。その結果、開業医の報酬を引き下げて勤務医に回すことが決定したのです。
この決定は、2009年4月に財務省が、「病院勤務医の平均年収が1415万円、開業医の平均収入が2804万円」と発表したのを受けてのことだと思われます。