マット安川 毎月中国に取材に行かれている今回のゲスト・宮崎正弘さん。社会も経済も今なおめまぐるしく動いており、良くも悪くもパワーがあるので定期的に取材しないと置いていかれるのだそうです。頻発する暴動や閣僚の利権争いなど、現地で知りえた最新情勢をお話しいただきました。

一枚岩ではない中国共産党。利権めぐり激しい権力闘争を展開

「マット安川のずばり勝負」ゲスト:宮崎正弘/前田せいめい撮影宮崎 正弘(みやざき まさひろ)氏
評論家、作家。国際政治・経済の舞台裏を解析する論評やルポルタージュを執筆。中国ウォッチャーとしての著作の他、三島由紀夫を論じた著書もある。代表作に『拉致』(徳間文庫)『中国大分裂』(文藝春秋)『出身地で分かる中国人』(PHP新書)など。最新作は『中国ひとり勝ちと日本ひとり負けはなぜ起きたか』(徳間書店)など。(撮影:前田せいめい、以下同)

宮崎 中国共産党は今年創立90周年を迎えます。いまは盤石に見える一党独裁体制ですが、あとどれくらい続くかは分かりません。中国共産党が一枚岩でまとまっているというのは対外イメージであって、権力中枢の中で本当はどんなことが起きているのかは誰も知らないのです。

 来年10月に中国共産党第18回党大会があり、習近平(副主席)が総書記に選ばれるとみられています。習近平にとって一番関心があるのは、改革ではなく、権力をできるだけ長く維持することです。革新的改革的な政治はまったく望めないと思います。

 その習近平のライバルが李克強(第一副首相)です。李克強は、2013年3月に開かれる全国人民代表会議(全人代)で行政トップの国務院総理になるとみられています。

 この2人は、「人民日報」などを読むと、発言に微妙な齟齬が出てきたりしている。また、北京オリンピックのVIP席を見ていると、周近平と李克強が並んで座っていても互いに横を向き一度も顔を合わせないなど、仲が悪いということが分かります。

 李克強は胡錦濤(国家主席)が率いる共産主義青年団、いわゆる団派に属しています。いま中国の各地を団派の幹部が押さえている。広東省や内モンゴル自治区など10くらいの省書記は団派です。

 一方、これ以外の地域は習近平が属する上海派が押さえている。これは権力闘争なのです。その中身は利権争い。