先日、3月11日以来初めてとなる新型車の専門メディア向け試乗会があり、参加してきた。その新型車は「プリウスα」。動力システムはもちろん、俗に「プラットホーム」(その定義は曖昧だが)と呼ばれる自動車としての基本骨格、走行機能要素などをプリウスと共用しつつ、多人数乗車が可能な空間を仕立てたクルマである。
このプロダクツそのものについて語るのは今回のこのコラムの本論ではないので簡単に止めるが、日本のこうした「多座席乗用車」の常として、その中に座り、移動する人々にとって何よりも必要な「十分な衝突安全性」が担保されているのは4人まででしかなく、居住空間としても無理のない着座姿勢が取れるのは4人まででしかない。
こうした事実に、ユーザーの、そして社会全体の目が向くことがないまま日本製の「ミニバン」は売られ続けている。日本の自動車社会、クルマづくりが抱える様々な問題点の1つだが、ここでぜひ知っておいていただきたいと思う。
プリウスαの場合、2列目のシートバックをどの角度にして座るのが本来の設定なのかが、座る人には分からない(本来の設定は、最も立てた位置からリクライニングノッチ4段目である。ただし、疲労や衝突安全を考えるともう少し立てた方が良い)。また、2列目中央席用のシートベルト(天井側に組み込まれている)が座ってしまうと簡単には引き出せないなど、固有の問題も指摘しておく。
ハイブリッド動力システムについて言えば、メカニズムも基本的な制御も、既存のプリウスや「レクサスCT200h」と変わりはない。2列シート仕様では従来通りにNi-MH(ニッケル水素)電池を採用している。3列シート仕様では、3列目のシートの足元空間を確保するため、リチウムイオン電池を新たに採用した。容積を小さくして前席シート間のセンターコンソールの中に収めている。しかし、電力を引き出す動力システムはNi-MH電池と併用、あるいは充電する制御も共用している。リチウムイオン電池を「使いこなす」のはまた次のステップで、という状況であることは、少し走らせただけでも読み取れる。
別の観点から見れば、駆動力の作り方や電力マネジメントについても、まったく従来の「トヨタメソッド」を踏襲していて、新しい技術的知見は特にない。
トヨタは敵を「しゃぶりつくす」分析を行っているのか
トヨタ自動車の開発陣とすれば、派生車種としてはこのアプローチで問題なく仕上げられる、という考え方だったはずである。
だが、このコラムで紹介したように、このトヨタ流ハイブリッド動力システムの市場投入からもう14年が経過している。その機構と制御を徹底的に調査し、解析して、その先を行くべく開発されたシステムが既に登場している。