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 世界の企業が男女格差解消に向けて動く中、日本企業はいまだ「周回遅れ」と指摘される。単純な数字の比較では測れない“真の格差”の改善のため、企業がなすべきことは何か。本稿では『男女賃金格差の経済学』(大湾秀雄著/日経BP 日本経済新聞出版)から内容の一部を抜粋・再編集。格差温存により生じるデメリットや、変革のための知見、手法について解説する。

 男女賃金格差の是正に向け、市場の信頼感を得るために欠かせない経営陣のコミットメント。女性登用やダイバーシティ施策推進に対し、経営者が責任を持つ必要性とは?

経営陣の責任

男女賃金格差の経済学』(日本経済新聞出版)

 アクションプランの策定において、第1に重視すべきなのは経営陣によるコミットメント(公約)だ。経営陣のコミットメントを確立した上で進めることで、それぞれのアクションプランによる効果は増幅する。

 経営陣のコミットメントの重要性については、ダイバーシティプログラムの評価を行ったハーバード大学のドビン教授らの研究チームが行った研究(Kalev, Dobbin and Kelly 2006)が参考になる。

 彼らは、連邦政府の調査データをもとに、708社の民間企業が1971年から2002年までの間に実施したダイバーシティプログラムを分析して、以下の3つに分類した。

  • ダイバーシティに対する組織の責任を確立する
  • 研修やフィードバックを通じて管理職の偏見を緩和する
  • 女性やマイノリティ労働者の社会的孤立を軽減する

 そして、これら3タイプのアプローチが、管理職の女性比率や人種別の多様性に対して、どの程度の効果があるのかを分析したところ、以下のような結論に至った。